確かに、ここにいた。
(ん……。なんか、変な感じだ……)
その日、昼寝から目覚めたぱかおは体に違和感を覚えた。
漸く慣れてきた感覚から、再び乖離していくように思えたのだ。
(そうか……。オレ、もうすぐ元の姿に戻るんだな……)
ぱかおはそれを、本能で察した。
そして、最後の願いを叶えるためにリビングに向かう。
もうすぐ夕食時ということもあり、そこには全員が揃っていた。
「オレ、みんなと一緒にシャシンが撮りたい!」
ぱかおは、リビングの扉を開けるなり元気よく叫んだ。
その大きな声を聞き、皆の視線が一斉にぱかおへと向く。
「ぱかお、急にどうしたの……?」
ぱかおに声をかけたのは、一番近くにいた心だ。
「なんとなくだけど、オレはもうすぐアルパカに戻る気がするんだ! だから、ニンゲンだった証拠みたいなものを残したいんだぞ!」
「だから、写真……?」
「おう! あれなら、ずっと残るだろ!?」
勢いよく言ったぱかおに、虹太が反応する。
「でも、りっくんの薬を使えばいつでもまた人間になれるんじゃないの~?」
「そうかもしれないけど、オレはもうニンゲンになる気はないからな!」
きっぱりと言い切ったぱかおの瞳に、一切の迷いはなかった。
「アルパカのオレがニンゲンになるのは、自然のコトワリ? に反してると思うんだ! それにオレはもう、ニンゲンの姿でやりたいことは全部できたからな! なんの悔いもないぞ! だから、またニンゲンになる気はないんだ!」
ぱかおは、とてもすっきりとした笑顔を浮かべている。
これが心からの想いだということは、誰が見ても明らかだ。
「じゃあ、みんなで写真を撮ろう。柊平さん、カメラを持ってきてくれる?」
「かしこまりました」
「あっ、僕もタブレット持ってきます。二台で撮った方が安心ですしね」
「みう、ぱかおのとなりー!!」
「おう、いいぞ! ヤマトも隣で撮ろうぜ!」
「………………………………!!」
「大人数だし、二列にすっか。小さい奴は前に並べよ」
「ちょっ、蒼一朗さん! 俺のこと見ないでくださいっす! この間身体測定があったんすけど、ちゃんと身長伸びてましたから! 五ミリ!」
「僕は、三センチ伸びてた……」
「ふふふ、すぐに僕も抜かされてしまいそうですね」
「りっくん、せっかくの記念撮影なんだから笑おーよ☆ ほら、笑顔の練習! い~ってやってみて、い~って! 俺、りっくんの笑顔が見てみたいな~♪」
「……君みたいな阿呆面を晒すつもり、僕はないから」
その後、柊平が持ってきたカメラと湊人のタブレットにより写真は撮られた。
それは、一色隊らしくとても賑やかで楽しげなものになった。
中心に写るぱかおの笑顔は、誰よりも幸せそうに輝いている。
翌日から、印刷されたこの写真はリビングに飾られることになる。
皆は、写真立てに入ったそれを見る度に思い出すことになるだろう。
人間になったぱかおが、確かにここにいたことに――――――――――。