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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第五十五話
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いざ、夜の探検へ!

 ――――――――――――パチパチパチパチ。

 心が的の中心を射抜いた矢をぼうっと見ていると、背後から拍手が聞こえた。

 振り向くと、憧憬を宿したような笑顔でぱかおがこちらを見ている。


「シン、すごかったぞ! さっきまではカッコイイ感じだったけど、今のはとってもキレーだと思った! 男にキレーって言うのは、ちょっと変か?」

「……ううん、そんなことないよ。そう思ってもらえて、すごく嬉しい」

「言ってた通り、真ん中にあてちゃうんだもんなー! シンはすごいヤツだ!」

「……えへへ、ありがとう、ぱかお」


 ぱかおに釣られるように、心も少年らしい笑みを浮かべる。


「オレもやってみたいんだけど、できるかな!?」

「……うん、できるよ。先生、この子に教えてあげてもいいですか……?」

「おー、いいぞ。ここで見てるから、怪我だけには気を付けろよー」

「……はい。ありがとう、ございます……。ぱかお、僕の真似をしてみてね……」

「おう! おっ!? ユミって結構重いんだな! シンは力持ちだ!」


 こうしてぱかおは、心に教わりながら弓を引くことになった。

 だが全くの素人のため、何回やってみても矢は的まで届かない。

 文化祭で透花は見事に的を射抜いていたが、あれは普通ではないのだ。

 数をこなす内にぱかおの腕はプルプルと震え、上がらなくなってくる。


「ダメだー! もうできないぞ! まだあたってないのに!」

「……おしまいにしようか。この後、校舎の中の案内もしたいし……」

「残念だけど、仕方ないな! 届かなかったけど、やれて楽しかったぞ!」


 二人にやり取りを見ていた竹彪は、弓道場を後にしようとする。


「じゃあ、先に職員室に戻ってるわ。結城、片付けと施錠は頼んだぞ」

「先生、僕たちに付き添ってなくていいんですか……?」

「俺も、そこまで暇じゃないんだよ。お前らなら問題も起こさないだろうし、まあ大丈夫だろ。校舎の案内が終わったら、最後に声だけかけに来てくれー」

「わかり、ました……」

「じゃあ、また後でなー」


 竹彪はそう言うと、軽く手を振りながら弓道場を出て行った。

 その背中を見ながら、ぱかおがぽつりと呟く。


「オレが今日ここに来れたのって、アイツのおかげなんだよな……?」

「……うん。ぱかおが学校に入ってもいいって、許可を取ってくれたんだ」

「じゃあ、帰りにありがとうって言わなきゃいけないな! シンと仲良しってことは、アイツは怖いニンゲンじゃなくていいニンゲンってことだ!」

「……そうだね。二人でお礼を言ってから帰ろう」


 ぱかおは、未だに人間への恐怖を完璧に克服したわけではない。

 今日も、直接竹彪と言葉を交わすようなことは出来る限り避けていた。

 竹彪もそれに気付いているようで、必要以上に接触してくることはなかった。


「……じゃあ、片付けをしようか。ぱかお、手伝ってくれる……?」

「もちろんだ! 何をすればいいんだ!?」

「……あの矢を取りに行こう。横にある道を通って行くんだよ……」

「わかった! オレ、頑張るぞ!」


 二人は協力しながら、片付けや清掃などをあっという間に終わらせた。

 そして、夜の校舎の探検に繰り出したのだった――――――――――。

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