目的と結果を見誤るなよ
「ふう……」
「シン! 無理しなくていいぞ! 辛そうなシンを見るのはオレも辛い!」
「大丈夫……。次こそ……!!」
あれから何本弓を射っても、それが的の中心を射ることはなかった。
放たれたばかりの矢も、先程より中心から離れた場所に刺さってしまう。
「結城、集中力が切れてきてんぞ。それじゃあ、中るものも中らなくなる」
後方で見学していた竹彪が、突然声をかけてきた。
今の心にとって辛いのは、肉体ではなく精神の疲労だった。
集中力を極限まで高め、その一本に全てを込めて射っている。
そのため、精神が擦り減り、徐々に集中出来なくなってきているようだ。
「僕、集中するのは得意なはずなのに……」
「確かにお前の集中力はすごいけどさ。今日は、的に中てようとしすぎだ」
竹彪はそう言うと、弓と矢を持ち射場に立つ。
彼がここに立つのを見るのは、入部してから今まで一度もなかった。
弓を構える流麗な動作は、神々しさを覚えるほどに美しい。
気付けば、彼の放った矢は的の中心をしっかりと貫いていた。
「弓道は、矢を射ることが目的じゃないっていつも言ってるだろ。弓を引くことの結果によって、的を射抜くことになるんだってさ。基本を忘れんなよー」
そう言って振り向いた竹彪は、見慣れた緩い笑顔を浮かべている。
だが、彼が纏う雰囲気はいつもと全く違っていてどこか神秘的だ。
それに圧倒された心は、しばらく言葉を発することが出来ないのだった――――――――――。