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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第五十五話
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目的と結果を見誤るなよ

「ふう……」

「シン! 無理しなくていいぞ! 辛そうなシンを見るのはオレも辛い!」

「大丈夫……。次こそ……!!」


 あれから何本弓を射っても、それが的の中心を射ることはなかった。

 放たれたばかりの矢も、先程より中心から離れた場所に刺さってしまう。


「結城、集中力が切れてきてんぞ。それじゃあ、中るものも中らなくなる」


 後方で見学していた竹彪が、突然声をかけてきた。

 今の心にとって辛いのは、肉体ではなく精神の疲労だった。

 集中力を極限まで高め、その一本に全てを込めて射っている。

 そのため、精神が擦り減り、徐々に集中出来なくなってきているようだ。


「僕、集中するのは得意なはずなのに……」

「確かにお前の集中力はすごいけどさ。今日は、的に中てようとしすぎだ」


 竹彪はそう言うと、弓と矢を持ち射場に立つ。

 彼がここに立つのを見るのは、入部してから今まで一度もなかった。

 弓を構える流麗な動作は、神々しさを覚えるほどに美しい。

 気付けば、彼の放った矢は的の中心をしっかりと貫いていた。


「弓道は、矢を射ることが目的じゃないっていつも言ってるだろ。弓を引くことの結果によって、的を射抜くことになるんだってさ。基本を忘れんなよー」


 そう言って振り向いた竹彪は、見慣れた緩い笑顔を浮かべている。

 だが、彼が纏う雰囲気はいつもと全く違っていてどこか神秘的だ。

 それに圧倒された心は、しばらく言葉を発することが出来ないのだった――――――――――。

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