君の笑顔は着火剤
「ここが、弓道場だよ……」
「すごいな! こういう雰囲気を、オゴソカって言うんだろ!」
「よく、そんな難しい言葉を知ってるね……」
「へへへっ! 伊達にトウカやシュウヘイに付いて回ってないぜ!」
心が竹彪に掛け合ってから二日後の夕方に、ぱかおは高校を訪れていた。
既に部活は終わっている時間で、校舎の中にもほとんど人は残っていない。
(話には聞いてたけど、本当に明るくて元気な子なんだなー。そんなに深い事情がありそうなタイプには見えないけど、まあ、こういう思い込みはよくないか)
心とぱかおが射場で話しているのを見ながら、竹彪はそんなこと考えていた。
さすがに弓道場に二人きりには出来ないため、付き添っているのだ。
「早くシンがキュウドウしてるところを見たいぞ!」
「ちょっと待ってね……。先生、矢を射ってもいいですか……?」
「おー、好きにやっていいぞ。怪我だけはしないでくれると助かる」
「わかりました……。ぱかお、少し離れて見ててくれる……?」
「おう! 楽しみだー!!」
ぱかおが自分から離れたのを確認してから、心は姿勢を整える。
そして弓に矢をかけ、まずは視線で的の中心を射った。
その後、彼の手から放たれた矢は的へと真っ直ぐに飛んでいく。
「……おお! すごい! 的に刺さったぞ!」
「……こんなものかな。もっと、真ん中に射る予定だったんだけど……」
心の矢は、的の中心よりも少し離れた場所に刺さっていた。
これでも充分に凄いことなのだが、納得がいかないようだ。
せっかくならば、もっとかっこいいところをぱかおに見せたかったのだろう。
「的に刺さるだけでもすごいと思うけど、もっと真ん中にいくのか!?」
「いつもってわけじゃないけど、できたことはあるよ……」
「そうなのか! 見てみたいぞ!」
「………………………………!! わかった、やってみる……」
ぱかおの無邪気な笑顔が、心の闘志に火を点けたようだ。
こうして、心の挑戦が始まったのだった――――――――――。