大好きな相棒のために
「先生、あの、相談があるんですけど……」
「結城、どうしたんだよ。変に改まって」
「僕の友達を、部活に連れてきてもいいですか……?」
「おっ、入部希望者か。大歓迎だぞー」
「ええと、この学校の友達じゃないんですけど……」
心は、担任でもあり部活の顧問でもある男性教師、片桐竹彪にとある相談を持ち掛けていた。
「シンがキュウドウをやっているのを見てみたいぞ! 絶対かっこいい!」
このぱかおの夢を実現させるために、竹彪に掛け合ってみることにしたのだ。
だが、心の友人が学内の生徒ではないということを聞き竹彪は難色を示す。
「……あー、結城、この高校が原則部外者立ち入り禁止なのは知ってるな」
「……はい。知ってるけど、でも……」
「この規則は生徒を守るためにある。別に、お前たちに意地悪するためじゃない」
「……それも、わかってます」
「だから、教師の俺からは諦めてくれとしか言えない。少し先になっちまうけど、今年の文化祭まで待ってもらえ。それなら、見学も体験もできるんだからさ」
「……それじゃ、ダメなんです。今しか、時間がないから……」
心は、竹彪の目を真っ直ぐに見つめながらそう言った。
その視線と言葉に、彼は何かを感じ取ったようだ。
「……その子、病気か何かなのか?」
「……病気じゃありません。でも、今年の文化祭には来てもらえない……」
「……いくつくらいの子なんだ? 性別は?」
「……多分、中学生くらいです。性別は、男です……」
「……学校は行ってるのか?」
「……行ってません。今までも、これからも、ずっと行けない……」
この言葉が、竹彪にとある考えを抱かせることになる。
(なんらかの理由で、不登校になってんのか……?)
全くの誤解なのだが、心は多くを語らないため彼がそれに気付くことはない。
親身な教師である彼としては、謎の少年を放っておけないと考えたのだろう。
首の後ろを掻きながら、深い溜め息と一緒に言葉を吐き出す。
「……確認のために聞くけど、危ない奴じゃないんだよな」
「……はい。ものすごく元気で、明るくて、楽しい子です……」
「……わかった。俺の親戚の子がこの高校に興味があるとか言って、上に申請してみるわ。どうせなら、コソコソ隠れてじゃなくて堂々と見学したいだろ」
「………………………………!! いいんですか……?」
「おう、その代わり、絶対に誰にも秘密にしろよー」
「……はい。僕、口はとても堅いので……」
「結城のその言葉、すごい安心感あるわ。学校に行ったことない子なら、校舎の中とかにも興味あるかもな。部活だけじゃなくて、そっちも案内してやれよー」
「……はい! ありがとうございます……!!」
心は、普段はあまり他人に見せないとびきりの笑顔でお礼を言う。
それに加え、丁寧に頭を下げてから竹彪の元を去っていった。
(おーおー、あんな笑顔になっちゃって。よっぽど大切な友達なんだろうな)
心の背中を見送ると、竹彪は職員室に向かって歩き出した。
そして難なく教頭の説得に成功し、ぱかおが高校を訪れる手筈が整えられたのだった――――――――――。
心くんのお話だけ、分割して少し長めに書く予定です。
お付き合い、よろしくお願いいたします。