足が長いのも素晴らしい!
「すごくにぎやかな場所だな! 目も耳も忙しいぞ!」
「……ああ、そうだな。目的の物はこっちだ。早く行くぞ」
「シュウヘイ、待ってくれ! オレ、あれもやってみたい!」
「……後にしろ。そんなに焦らなくても、あれらは逃げたりしない」
柊平とぱかおは現在、二人でゲームセンターに来ている。
きっかけは、ぱかおの“車の運転がしてみたい”という要望だった。
「クルマの運転がしてみたいぞ!」
「……却下だ」
「クルマがダメならヘリでもいい!」
「……それも、却下だ」
「なんでだ!? オレ、今なら足が長いからちゃんとブレーキ踏めるのに!」
「……車やヘリの運転には、免許というものが必要になるんだ」
「メンキョ? それはどこで手に入るんだ?」
「……一定期間、そのための学校に通わなければ取得できない」
「そうなのか!? どれくらい時間があるかわかんないオレには無理だな……」
柊平が正論を諭すと、ぱかおはすっかり落ち込んでしまった。
だが、秩序を重んじる男である柊平はこう言うしかないのだ。
「じゃあ、二人でゲーセン行ってくれば~?」
「ゲーセン? 不思議な名前の場所だな! そこならウンテンできるのか!?」
「本物じゃなくてゲームだけどね~。でも、ハンドルを握ったりブレーキを踏んだりはできるよ。本物と違って免許もいらないし、安全に遊べちゃう☆」
「シュウヘイ、オレをゲーセンに連れて行ってくれ!!」
そんな二人に声をかけたのが、虹太だった。
柊平は、ゲームセンターのように騒々しい場所は苦手だ。
だが、ぱかおのおねだり攻撃に負けてここまで足を運んだのだ。
「対戦! シュウヘイ、対戦しよう!」
「……私は構わないが大丈夫なのか? お前は、ゲームも運転も初心者だろう」
「シュウヘイがウンテンするのをたくさん見たから平気だ! それに、これはゲームだからな! 負けても痛くないし、楽しければいいんだ!」
「……わかった。では、始めるか」
二人はレースゲームの運転席に座ると、早速対戦を開始した。
ぱかおだけではなく、柊平もゲームで運転をするのは初めてだ。
だが、元々運転が上手いこともありすぐにコツを掴んだようだ。
悠然と障害物を避けながら、ぱかおやNPCの車を抜き去っていく。
一回目の勝負は、柊平の圧倒的勝利に終わった。
「負けた! シュウヘイ、すごいな! もう一回やりたいぞ!」
「……構わない。何度でも受けて立とう」
それから二回、三回と続けるも、ぱかおが勝つことはなかった。
車が関わっているので、柊平もわざと手を緩めたりはしないようだ。
その後も何回か勝負をしたが、結果は柊平の全勝だった。
だが、念願の運転を体験できたぱかおはとても楽しそうである。
「勝てなかったけど面白かったぞ! ウンテンって楽しいな!」
「……ああ、そうだな」
「次はあれで遊んでみたい! シャシンが撮れるのか?」
「……いや、待て。あそこは男だけでは入れないんだ」
「そうなのか! じゃあ、あれ! あのお菓子をシンにプレゼントするんだ!」
「……わかった。好きなだけ遊ぶといい」
その後、二人は二時間ほどゲームセンターで遊んだ。
「楽しかったな! ニンゲンでいられる内に、もう一回くらい来たいぞ!」
「……楽しめたならよかった。……だが、私は遠慮するので次は椎名を誘ってくれ。あいつならば、こういう場所にも慣れているだろう……」
帰路に着いても、まだ遊び足りないという様子でぱかおは目を輝かせている。
反対に柊平は、慣れない場所で活動したせいですっかり疲れ切っていたのだった――――――――――。