指があるって素晴らしい!
「よーっし、早速やってみようか!」
「やったー!」
虹太とぱかおは現在、二人でサロンにいる。
「オレ、ピアノが弾いてみたい! あと、ギターも!」
ぱかおの発言を受け、虹太が彼にピアノを教えることになったのだ。
「ぱかおがピアノを弾いてみたいと思ってたなんて全然知らなかったよ~。よく練習を聴きにくるから、音楽が好きなんだろうな~とは思ってたけどさ☆」
「オレ、コウタの演奏が大好きだからな! ピアノは、ずーっと弾いてみたいと思ってたぞ! というか、実はこっそり弾いてみたことがある!」
「え、そーなの?」
「おう! だけど、弾くっていうかケンバンを踏むことしかできなくて……」
「う~ん、確かにぱかおの蹄だとそうなっちゃうかもね~」
「あの時は悲しかった……。でも、アルパカのオレには仕方ないことだからな! 今日はこーんなに長い指があるんだ! 踏むじゃなくて弾くができるぞ!」
「そうだね☆ どれぐらい時間があるかわかんないけど、一曲は絶対に弾けるようになろ~! そして、みんなの前でお披露目しちゃおーよ♪」
「おう! オレ、頑張るぞ! コウタ、よろしくな!」
こうして、虹太によるピアノ教室が始まった。
驚異的な集中力を発揮したぱかおは、三時間ほど練習に励んだ。
そして、拙いながらも両手を使って一曲弾き切れるようになったのだ。
(上手いってわけじゃないけど、ずっとピアノを弾いてみたかった、音楽が好きだって気持ちが溢れてる。うんうん、“いい音楽”ってこういうのだよね~☆)
ぱかおの演奏を聴きながら、虹太はそんなことを思う。
「コウタ、どうだった!? オレ、ちゃんと弾けてたか!?」
練習した曲を弾き終えたぱかおは、とても楽しそうだ。
虹太は右手でグーサインを作ると、それをぱかおに見せる。
「すっごくいい演奏だったよ~♪ オレ、感動しちゃったもん☆」
「やったー! コウタがそう言うなら間違いないな!」
「みんなに聴いてもらうのが楽しみだね~!」
「おう! その前に、次はギターを教えてくれよ!」
「いいよ~。じゃあ、中庭に移動しよっか。ついでに休憩もしよ~」
「わかった! ギターも指がないとできないガッキだからな! コウタとミウのこと、いっつもうらやましいな~って見てたんだぞ!」
「そうだったんだ~。ギターはさすがに無理だけど、ぱかおの蹄でもできそうな楽器が俺の部屋にあるよ~。欲しかったらあげようか?」
「そんなガッキがあるのか!? 欲しいぞ!」
「じゃあ、あげる~☆ ボンゴって楽器なんだけど……」
音楽の話に花を咲かせながら、二人はサロンを出て行く。
その姿は、仲睦まじい兄弟のように見えるのだった――――――――――。