森の奥の不思議な草
「ぱかお、今はにんげんなんだから手づかみでたべちゃダメだよ!」
「そんなこと言われても、ハシ使えない……」
「………………………………♪」
「スプーンだ! ヤマトありがとな!」
皆の気持ちを落ち着けるために、まずは全員で朝食をとることなった。
現状をいち早く理解したのは、考えが柔軟な美海と大和である。
身体こそぱかおの方が大きいが、弟ができたような気分なのだろう。
両隣に座り、甲斐甲斐しく食事の世話を焼いている。
心もいつもと変わらず、黙々と食事を頬張っていた。
そんな光景を見ながら、大人たちは状況を整理していく。
「ぱかお、人間になったことに何か心当たりはない?」
そんな中、口火を切ったのは透花だった。
ぱかおはもぐもぐと口を動かしながらも、懸命に考えている様子だ。
自慢の毛を失ってしまったことは、彼にとっても由々しき事態なのだろう。
「うーん、なんだろうな……」
「昨日、何かいつもと違ったことをしなかった?」
「あっ、それならいつもは行かないような森の奥の草を食べたぞ!」
「森の奥の、草……?」
ぱかおの声に反応したのは、少し離れた席に座る理玖だった。
「おう! コウタが帰ってきた後に、鍵が閉まってないことに気付いたんだ!」
「ぱかお、ごめんね~。ありがと☆」
「気にすんな! 失敗は誰にでもあるからな! それで、代わりに閉めようと思って玄関に近付いたら、外からいつもと違うニオイがしたんだ! なんだろうって思ってそのニオイを辿ったら、森の奥に着いたんだぞ! それで、そのニオイがする草を食べてみた! 昨日したのは、それくらいだな!」
「まさか……」
理玖は小さな声でそう言うと、箸を置き立ち上がった。
そして、元々白い顔を更に青白くさせ、ダイニングを出て行く。
「何か心当たりでもあったのかな。あの様子だと、すぐに戻ってくると思う。みんなは心配しないで食事を続けていて大丈夫だよ」
透花の言葉通り、二十分ほどしたところで理玖は戻ってきた。
その手に、とある草を携えて――――――――――。