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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第五十五話
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四足歩行のきみ

 謎の少年と透花は、すぐに柊平と蒼一朗により引き離された。

 少年は毛布に包まれ、部屋の隅に隔離されてしまう。

 この状況が理解できないようで、彼は不思議そうな表情を浮かべている。


「みんな集まってどうしたんだ? 今日は何かある日だったか?」


 だが、物怖じした様子はまるでなく、あくまでも堂々としている。

 今度は隊員たちが、不思議そうに彼を見つめる番だった。


「えーっと、誰かの知り合いってわけじゃないんだよね?」

「……はい。少なくとも、この場にいる者の顔見知りではないようです」

「じゃあ、心の友達か? 年齢的にありえなくもねーけど……」

「でも、学校の友達なら俺も知ってるはずっすよ!」

「それに、心ちゃんは透花さんの許可なしに友達を泊めたりしないでしょ~」

「悪い子ではなさそうですが……」

「……それは楽観視しすぎじゃないの」

「こういう時は、ほんとに意見が合いますね。僕も右に同じです。純真無垢な顔をしてる人間ほど、腹の中は真っ黒だったりするんですから」


 大好きな人たちが、自分に聞こえないようにコソコソと何かを話している。

 自分に向けられる視線は、いつもとは比べ物にならないくらいに冷たい。

 その現実に耐えられなくなった少年は、突然大声を上げた。


「一体どうしたんだよ!? トウカ、今日はどうして撫でてくれないんだ!?」

「いつも、撫でている……?」

「シュウヘイ、今日はいい天気だからクルマに乗せてくれよ!」

「車に、乗せる……?」

「ソウイチロウ、今日はトレーニング日和だぞ! オレも協力する!」

「トレーニングに、協力……?」

「ハヤテ、暑くなってきたからちょっと毛を切ってくれよ!」

「毛を、切る……?」

「コウタ、ちなみに鍵は閉まってなかった! オレが閉めてやったんだぞ!」

「え、マジで~?」

「ハルヒサ、オレ、今日ははちみつレモンが飲みたい! 作ってくれ!」

「はちみつレモン、ですか……?」

「リク、畑のイチゴが食べ頃だぞ! お前の好物だろ!」

「どうしてそれを……」

「ミナトはオレに優しくないけど、オレはミナトのこと好きだ!」

「あれ、僕だけディスられてない?」


 皆の反応は、少年の思い描いていたものとは違ったようだ。

 愛らしい瞳が、あっという間に涙でいっぱいになっていく。

 隊員たちの中には、とある可能性に行き着いた者もいた。

 だが、自分の中にある“常識”がそれ以上の思考を否定する。

 少年はキョロキョロと部屋の中を見渡すと、立ち上がった。

 彼を包んでいた毛布がはらりと床に落ち、少年は再び全裸になってしまう。


「シン! シン、どこだ!? みんながいつもと違うんだ! 助けてくれ!!」


 そしてそのまま、四足歩行で透花の部屋を飛び出したのだった――――――――――。

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