一色邸は、朝からとてもにぎやかです。
一番に透花の部屋へと駆け付けたのは柊平だった。
次に朝食の準備をしていた晴久、その次にやって来たのは理玖である。
それから、蒼一朗、颯、虹太、湊人の順に訪れたところで、話は進む。
心はまだ眠っているのか、姿を現す気配がなかった。
透花に抱き付いている全裸の少年を見て、彼らは一様に固まってしまった。
彼女に夢を抱いている面子が多いので、この反応は仕方ないのだろう。
「透花さんって、もしかして少年好きだったの?」
皆が静まり返る中、何食わぬ顔で口を開いたのは湊人だ。
先程の表情はどこへやら、今は何やら楽しそうな笑みを浮かべている。
「……違うよ。起きたら、この子が隣で寝ていたの。見覚えのある人はいない?」
皆は少年の顔を覗き込むが、彼を知る者は一人もいないようだ。
目立つ髪色に注目してしまうのは、やむを得ないことなのかもしれない。
「……こいつ、髪の色が颯に似てるよな。お前の弟だったりしねえの?」
颯にそんな疑問をぶつけたのは、蒼一朗である。
颯は首を大きく横に振ると、それを否定した。
「知らないっすよ! 大体、俺は親の顔もわかんないんすから! もし本当に弟だったとしても、知ってるわけないじゃないっすか!!」
「そうだよな……。こいつ、マジで誰なんだ?」
そこから、議論はヒートアップしていく。
「……誰も見覚えがないのならば、外部から侵入したと考えるのが妥当だろう。昨晩、最後に帰宅したのは確か椎名だったな」
「……君、ちゃんと玄関の鍵かけたわけ?」
「ちょっと、柊平さん、りっくん、ひどいよ~! 俺、ちゃんと鍵かけたし! なんなら、今確認してきてもいいよ!? ぜ~ったいに閉まってるからね!」
「みなさん、あんまり大きな声を出すとこの子の目が覚めて……」
晴久が言いかけた、その時だった。
「う~ん……」
謎の少年が、ゆっくりと瞬きをしながら目覚めたのだ。
全員が、その愛らしい瞳をどこかで見たことがあるような感覚を覚える。
だが、それがどこで見たものかまでは思い至らなかった。
「トウカ、おはよう!」
「あっ……!」
少年はそう言うと、勢いよく透花に抱き付く。
彼の重さを支えきれなかった透花は、そのままベッドに倒れ込んでしまった。
つまり、全裸の少年が透花を押し倒している状況なのだ。
「「「「「「「~~~~~~~~~~っ!“」」」」」」」
男たちの声にならない悲鳴が、朝の一色邸に響き渡ったのだった――――――――――。