夢、ではないようだ
透花はその日、いつもと同じように目を覚ましたはずだった。
だが、“日常”ではない光景が彼女の前に広がっていたのだ。
(えっと、この子、誰かな……?)
年齢は、心や颯よりも少し幼いくらいだろうか。
銀色の髪の少年が、透花のベッドの中でスヤスヤと眠っていたのだ。
透花は少年に全く見覚えがないのだが、問題はそれだけではない。
少年は一切の服を纏っておらず、完全に裸だった。
その状態で、透花に抱き付くようにして眠っているのだ。
(どういうこと……? 窓も玄関も、ちゃんと施錠しているのに……?)
何かあった時のために、彼女の自室の鍵は常に開いている。
だが、外部からの侵入経路になり得る場所は施錠されているはずだ。
起きたばかりで頭が働かないということもあり、彼女は珍しく混乱していた。
急いで文章を作ると、それを隊員たちの通信機へと送る。
『目がさめたら、知らない男の子がいっしょに寝ていた。誰か来てくれないかな』
焦り過ぎて、所々漢字への変換を忘れるくらいだ。
送信したとはいえ、まだ早朝で起きている隊員もそれほど多くないだろう。
そう思った透花は、とりあえず少年と距離を取ろうと試みてみた。
「う~……」
だが想像以上に彼の力は強く、その腕を引き剝がすことは出来なかった。
諦めて軽くため息を吐くと、彼女の自室の扉がノックされる音が聞こえる。
一色隊には、時間を問わずに駆け付けてくれる優秀な隊員がいるようだ。
「どうぞ、入って」
透花は平静を装いながら、扉の外へと声をかけるのだった――――――――――。