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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第五十四話
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ずるい言い方かもしれないけれど

 目を覚ますと、そこには見慣れた天井が広がっていた。

 どうやら僕は、自室のベッドで眠っていたみたいだね。

 困ったなあ、傷が痛くて自由に体を動かすこともできないよ。

 僕が天井を見つめていると、部屋の扉が開く音がした。

 顔をそっちに向けられないから、誰かは確認できない。

 だけど、僕の部屋に気兼ねなく入って来るなんて彼女しかいないよね。


「湊人くん、目を覚ましたの?」

「……うん、おはよう。僕、どれくらい寝てたの?」

「丸々一日ってところかな。湊人くんが男たちと対峙したのは昨日の話だから」

「そっか。なんだか、寝過ぎて時間を無駄にした気分だなあ」

「そう言わないの。もっと寝ていてもいいくらいなんだからね」

「そういえば、彼らはどうなったの? 本部に連行されたんでしょ?」

「そのことで、湊人くんに話があるの。聞いてもらえるかな?」

「もちろんだよ。このままじゃ、気になってゆっくり休めないからね」


 透花さんは僕の枕元に来ると、何かの書類を見ながら話し始めた。


「彼らは今、湊人くんへの暴行と失踪者たちについて本部で取り調べを受けています。その結果、ある組織が関わっていることがわかったの」

「ある組織? あいつら、単独犯じゃなかったんだね」

「うん。それが、反社会的勢力として本部も手を焼いている組織だったみたいで……。この件をきっかけに、壊滅に乗り出そうという働きがあるの」

「なるほど。そうなるのが自然な流れだよね」

「そのチームに湊人くんも参加してもらえないかって打診がきています」

「もしかしてその書類って、僕に関する辞令が書いてあったりするのかな?」

「さすが湊人くん、察しがいいね。その通りだよ」


 そう言うと透花さんは、僕が読める位置に書類を掲げてくれた。

 この辞令は、僕としては願ったり叶ったりって感じだよ。

 ……だって、まだまだわかっていないことが多過ぎるんだもの。

 両親がくれた時計の中に、どうして重要な暗号が隠されていたのかとかさ。

 それを調べられるんだから、参加するに決まってるでしょ。


「もちろん参加するから、明日から行くって返事をしておいてもらえるかな」

「了解。むしろ、今日から行きたいって言うかと思っていたよ」

「その気持ちは山々なんだけど、さすがに体が動かないんだよねぇ」

「……酷い怪我だから、本当は一週間くらい外出してほしくないんだからね」

「でも透花さんは僕の意見を尊重してくれるでしょ? 行くなとは言わないよ」

「……行くなって言っても、這ってでも行っちゃいそうだと思うんだけど」

「否定はできないなぁ。知りたいと思う気持ちを抑えることはできないからね」

「……明日からの出勤は許可します。だけど、必ず柊平さんに送迎をしてもらうこと。怪我が完治するまでは、深夜までの残業、徹夜などは全面的に禁止にします。これは私も譲れないから、絶対に守ってもらうからね」

「了解だよ。透花さん、ありがとね」

「どういたしまして。じゃあ、明日からよろしくお願いします。そういえば湊人くん、食欲はある? 薬を飲むためにも、何か食べた方がいいと思うんだけど」

「言われてみれば、お腹が空いてるような気がするなぁ。ぜひいただくよ」

「わかった。完成したら持ってくるから、それまではゆっくり休んでいてね」

「僕は体が動かないから、もちろん食べさせてもらえるんだよね?」


 僕はそう言うと、にっこりと笑って見せた。

 特別扱いじゃなくて、怪我人扱いはしてもらえるみたいだからさ。

 体が動かないのは本当だし、これくらいは許されるでしょ?

 透花さんは少しだけ驚いた表情をしたけど、すぐにいつもの笑顔に戻ったよ。


「いいよ。その代わり、たくさん食べてちゃんと薬を飲んで、早くよくなってね」

「ふふふ、わかってるよ。じゃあ、楽しみに待ってるね」

「うん。じゃあ、少し待っていてね。寝ていても構わないから」


 透花さんが部屋を出て行く音を確認してから、僕は瞳を閉じた。

 これ以上寝るなんて時間の無駄だって、頭のどこかでは思ってる。

 だけど、今の僕にできることって睡眠くらいしかないからさ。

 まあ、あれだけ寝たからそう簡単には寝付けないでしょ。

 ……そう思ったのも、束の間だったよ。

 体は睡眠を欲してたのか、あっという間に眠っちゃったんだもん。

 透花さんが食事を持ってきてくれるまで、僕は惰眠を貪ったのだった――――――――――。

体調不良により更新停止しておりました。

今日から、また更新していけるように頑張ります!

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