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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第五十四話
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言葉にしなくても伝わる気持ち

 僕が治療を受けていると、座席の下からぱかおが顔を出した。

 きっと、元依頼人たちに姿を見られないように隠れてたんだろうね。

 彼らは今、ここから少し離れたヘリ後方の部屋に収容されている。

 縄で縛られてる上に蒼一朗さんが見張ってるから、逃げることはできない。

 この空間を安全だと判断して、隠れるのをやめたのかな。

 いつもの僕だったら、後ずさってぱかおから離れてたと思う。

 長く一緒に暮らしていても、僕の動物嫌いは治ってないから。

 ……でも、今の僕にはそんな元気すらないんだよね。

 いつもみたいな反応をしない僕に、ぱかおは静かに寄り添った。

 まだ手当てをうけていない傷口から滲んだ血が、彼の毛を赤く染める。


「……自慢の毛が台無しになるから、離れた方がいいんじゃないかな」


 僕の言葉を聞いても、ぱかおは離れようとしない。

 その間にも、銀色の毛はどんどん血を吸っていく。


「……もしかして、心配してくれてるのかい?」


 僕がそう言うと、ぱかおは優しく体を擦り付けてきた。

 心くんがいないから、本当は彼が何を言ってるのかはわからない。

 でも、それでもちゃんと気持ちは伝わるものなんだなぁ。

 そう思うと、自然とお礼の言葉が口をついて出ていたよ。


「……ぱかお、ありがとう。とても助かったよ」


 僕は痛みで思い通りにならない腕をなんとか動かすと、彼の毛を撫でた。

 ……実は、ぱかおの毛を撫でるのはこれが初めてなんだよね。


(すごい……。こんなに柔らかいんだ……)


 毛布よりもふわふわとしていて、とても気持ちがいい。

 窓の外から差し込む日差しは、とても暖かいし……。

 初体験のぱかおの毛は、想像以上に極上の手触りだし……。

 この二つを感じながら、僕は自分の瞼が重くなっていくのを感じるんだ――――――――――。

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