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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第五十四話
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扉の先にあったのは、僕を導く光だった。

(透花さんが来てくれたんだ……!)


 ……そんな僕の希望は、瞬時に打ち砕かれたよ。


「あの~、すみません。どなたかいらっしゃるんですか?」


 だって、扉の外から聞こえてきたのは年老いた男性の声だったから……。

 僕を暴行していた音は、小屋の外にまで響いていたはずだ。

 ここで誰もいないふりっていうのは、さすがにできないだろうね。


「何の用だ!?」

「おぉ、やはりどなたかいらっしゃるんですね」

「登山中にここを見つけ、休憩させてもらっている! お前は誰だ!?」

「私は、この小屋の管理人でございます。近くを通りかかったら何やら音がしましたので、声をかけさせていただきました。登山客の方でしたか」


 元依頼人の男は扉を開けずに、管理人を名乗る男性と話を進めていく。

 ……見知らぬ人間を巻き込むわけにはいかないよね。

 彼には、一刻も早くここから立ち去ってもらわないと……!


「申し訳ないのですが、中に入れていただけますか?」

「……それは、なぜだ?」

「すごい音がしましたので、小屋の安全をこの目で確かめておきたいのです」

「……必要ない! ただ休憩しているだけだ!」

「ですが、この小屋を守ることが私の仕事ですので……」


 二人は、しばらく押し問答を続けていた。

 管理人の男が、小屋の中を確認するまで帰らないって言い張るんだもの。

 先に折れたのは、なんと元依頼人の方だったよ。


「……わかった! 今開けるから待っていろ!」


 そう言うと、仲間の男たちに目配せをする。

 ……こいつらは、何の関係もない人間までも殺めるつもりなんだろう。

 ここでこれ以上時間を使うよりも、その方が早いって考えてそうだ。


(それだけは、絶対に避けないと……!)


 ……自分のせいで誰かが死ぬなんて、後味が悪すぎるからね。

 僕は管理人の男に、入ってきちゃダメだと言おうと思って口を開いた。

 だけど、蹴られたお腹が痛んでその声は音にはならなくて……。

 小屋の扉が開かれてしまう光景を、僕は呆然と見つめていたよ。

 ……だけど、その先にいたのは老爺なんかじゃなかった。

 顔が見えなくても、その凛とした立ち姿でわかるよ。

 それが、僕が待ち侘びていた人だっていうのがさ――――――――――。

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