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感じた体温
(ここは……)
目を覚ました心の視界に入ったのは、真っ白な天井だった。
(薬の匂いがする……。理玖さんの診療所だ……)
意識を失った心は、ヘリコプターの中で理玖の治療を受け、そのまま診療所に運び込まれたのだ。
(僕、どれくらい寝てたんだろ……)
時計を確認するために体を起こそうとすると、右肩に痛みが走る。
「……まだ起きない方がいい」
「理玖さん……」
部屋の中にいた理玖が、静かに近付いてくる。
「僕、どれくらい寝てたの……?」
「……そんなに時間は経ってないよ。君が撃たれたのは、昨日の夕方のことだ」
「……そっか」
「……目が覚めたこと、彼女に知らせてくる」
理玖はそう言うと、部屋を出て行ってしまった。
心はそこで、自分の足元が暖かいことに気付く。
「君、なんで……」
布団を捲るとそこには、銀色の毛玉がすやすやと眠っていたのだった。