それは希望の音なのか
僕が男たちのサンドバッグになってから、三十分ほどが経った。
これだけ殴る蹴るを続けて、ようやくわかったみたいだね。
「こいつ、何もしゃべらねえ……!」
「こんなにボロボロなのに……!」
僕は、絶対に何も話さない。
場所さえわかれば、透花さんが絶対に来てくれるはずだから。
それまでの時間を、なんとしても稼がないといけないんだ。
(このくらいの痛みなら、まだ耐えられる……)
そんな風に思った、その時だった。
「おい! これを使ってこいつを殴れ!」
元依頼人が、一人の男に何か武器のようなものを渡したんだ。
眼鏡がないせいではっきりとは見えないけど、これはマズいね……。
「こんなんで殴ったら、死んじまうんじゃないですかい?」
「死なないようにやるんだよ! 骨の一本や二本折れば、こいつも素直になるだろう! いいか!? 頭はやめておけよ!? 腕や足を狙うんだ!」
「なるほど。そういうことなら……」
男は、凶器を持ったまま僕に近付いてくる。
……今までの暴行に耐えられたのは、男たちが素手だったからだ。
(骨折はさすがに耐えられないでしょ……! くそっ……!!)
“絶体絶命”という言葉が僕の頭を過ぎった瞬間だった。
――――――――――コンコン。
焦った僕の耳に、小屋の扉を叩く音が響いたんだ。