僕は、簡単に口を割るような男じゃないんだよ。
「おら! 起きろ!」
「うっ……」
冷たい何かをかけられた僕は、ゆっくりと目を開く。
顔にかかったのは、味も匂いもしないから有害な液体じゃなさそうだ。
おおかた、僕を目覚めさせるために冷水でもかけたんだろう。
(この状況は、ちょっとヤバいかもしれないね……)
目の前には、山小屋の中のような内装が広がっている。
……まあ、ぼやけてはっきりとは見えないんだけどさ。
意識を失う瞬間、僕の手は眼鏡には届かなかったみたいだ。
透花さんに、どうやってこの場所を知らせようかな……。
「お目覚めみたいだな!? 埋蔵金の場所、吐いてもらうぞ!」
小屋の中には、依頼人だった奴も含めて五人の男がいる。
みんな屈強な体をしてるし、僕一人じゃどうにもならない。
そもそも僕の体は、柱か何かにくくりつけられちゃってるみたいだし。
「さっきも言ったけど、僕は話す気はないですよ」
「……どういう状況か、まだわかってないみたいだな」
「僕の荷物をひっくり返して、手掛かりでも探してみたらどうですか?」
「そんなのとっくにやった! 何も見つからなかったがな!!」
埋蔵金の場所をメモした紙は、宿泊施設で処分してきたからね。
今の僕の荷物には、ヒントになるようなものは何も入ってない。
……僕にできることは、とにかく時間を稼ぐことだけだ。
詳しい場所を知りたいんだから、こいつらは僕を殺すことはできない。
殴ったり蹴られたりはするんだろうけど、そこは我慢しなきゃね。
正直、さっき殴られた頬がめちゃくちゃ痛いんだけど……。
こういう体を張った仕事は、僕の管轄じゃないはずなんだけどなぁ。
「………………………………」
僕はそれから、ひたすらに無言を貫いた。
「おら! 埋蔵金の場所を言え!」
「ぐっ……!」
男たちは、代わる代わる僕に暴行を加えてくる。
……さっきと違って、意識が飛ぶほどの痛みじゃない。
でも、気絶できないからこの痛みをちゃんと感じてしまうのはキツイな。
そのまま三十分ほどサンドバックにされたけど、僕は何も話さなかった。
こう見えても僕、痛みにはそこそこ強いんだよ。
だって、あの劣悪な鉱山で働いていた過去があるんだからさ――――――――――。