自分が思うよりも、ずっと
「へえ、埋蔵金があるんですね」
「いつまでそのくだらない演技を続ける気だ!? あんなにうろうろと歩き回りながら、埋まっている場所を探してたじゃないか!! あのプログラムは、地域の限定はできても詳しい場所までは教えてくれなかったみたいだな!」
なるほど、僕の動きがこの人にはそういう風に見えてたんだ。
まあ、言いたいことはわからなくもないよ。
「僕は、ただ単にこの長閑な雰囲気を楽しんでいただけですよ」
「ふん! お前が金に執着してるのは知ってるんだ! 莫大な金を独り占めしようと考え、ここまで単身で乗り込んできたんだろう!?」
男の言葉を聞いた瞬間、僕の口から漏れたのは笑い声だった。
だって、埋蔵金だなんて考えもしなかったんだもの。
古代兵器とか、そういう危険な物が埋まってたら嫌だなって思ってさ。
僕の好みじゃないけど、こういう風景を綺麗だと感じる人もいるんでしょ?
だからそれを壊さないように、何があるのかを見に来たんだ。
……こんな風に考えるなんて、僕も随分“軍人”らしくなっちゃったなぁ。
そう思ったら、笑いを堪えずにはいられなかったんだよね。
突然笑い出した僕を、男は不審そうな目で見ているよ。
「ふふふ、あはははは」
「私をなめるのもいい加減にしろ! 何がおかしい!?」
「いえ、これは僕個人の問題なのでお構いなく。そちらの事情も把握できましたし、知らない振りもこの辺にしておきましょうか」
「やはり、プログラムを解読してここを訪れたんだな!?」
「はい、その通りですよ。埋蔵金があるとは思っていませんでしたが」
「お前のおかげで、この辺りのどこかに埋まってることがわかったんだ。それに関しては礼を言っておく。だが、お前はもう用済みだ。始末させてもらうぞ!」
「前任者のプログラマーや、数学者たちみたいにですか?」
「そこまで知っているなら、尚更生かしてはおけないな! お前ら、やれ!」
依頼人の男は、二人の屈強な男に命令をする。
何かあったらすぐに力に訴えるような人間って、本当に嫌いだよ。
男たちの手が自分に届く前に、僕は笑いながら切り札を使うんだ。
「本当に、僕を殺していいんですか?」
「今更命乞いをしてもムダだぞ!」
「だって僕、具体的にどこに埋蔵金があるのか知ってるんですよ」
僕の動きを見て、そこまではわかってないって男は思ったみたいだけど。
それはこの人の勘違いで、大きな間違いでもあるからね。
さあ、これで僕のことを簡単には殺せなくなったでしょ?