あぜ道を、ぶらぶらと
住所を書いたメモを頼りに、僕は例の田舎町を訪れていた。
シャンカーニュっていう、観光客なんて滅多に来ない町だよ。
到着した頃には夜になってたから、町に一つしかない宿に泊まる。
決して豪勢ではないけれど、温かなおもてなしをしてもらえたよ。
翌日になると、僕はある物を処分してから宿を出た。
そして、特に行先を決めずにぶらぶらとあぜ道を歩く。
例の野原に向かうわけでもなく、ほんとに歩いてるだけだ。
コンビニなんて一つもないし、人もほとんどいない。
そんな場所を歩くだけなんて、普段の僕なら時間の無駄だと思うだろうね。
でも今の僕は、そんな風には思わないよ。
……獲物が網にかかるのを、じっくりと待ってるんだから。
(ふう……。この辺で少し休憩しようかな……)
一時間ほど歩いたところで、僕は大きな木の下に腰を下ろした。
そして、宿で貰った麦茶を飲んで、額の汗をハンカチで拭う。
まだ四月になったばかりとはいえ、これだけ歩き回るとさすがに暑いよ。
――――――――――その時のことだった。
「……二階堂さん、奇遇ですね」
(かかった……!)
僕に、とある人物が声をかけてきたんだ。
それは予想通り、僕に今回の件を依頼してきた男だったよ――――――――――。