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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第五十三話
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嫌いだったわけじゃないから

 すっかり行き詰まってから数日後、僕はとある時計塔の前にいたよ。

 この時計塔は、王都で一番高く豪奢なものなんだよね。

 音の良し悪しは正直わからないけど、響く鐘の音は荘厳に思えるよ。


(でも、これは“watch”じゃなくて“clock”だよなぁ……)


 色々と調べてはみたけど、今のところ有力な情報は得られていない。

 だから、気分転換にここまで足を運んでみたんだけど……。


(まあ、わかることなんて何もないよね)


 そもそも、こんな風に自分の足で情報を集めるのって僕らしくないよね。

 そうは思ってたんだけど、この状況を打破できる何かがあればと思ってさ。

 案の定、本物の時計塔を見てその音色を聴いてみてもなんにも閃かないよ。


(四時か……。ここにいてもしょうがないし、そろそろ帰ろうかな)


 目の前の時計塔から、鐘の音が四回聞こえてくる。

 僕は自分の腕時計を見て、溜め息を一つ吐いた。


(はあ……。またズレてるよ……)


 この時計は、両親が大学入学祝いにってくれた物なんだよね。

 前の家の家財や荷物なんかは、借金のせいで全部差し押さえられてしまった。

 これが唯一二人の形見って呼べる物だから、それなりに大切にしてるんだ。

 鉱山に連れて行かれた時も、取り上げられないようになんとか隠し通したし。

 ……僕は、両親を尊敬はしてなかったけど嫌いだったわけじゃないからね。

 だから、常にこの腕時計を身に付けてはいるんだけど……。


(……定期的に時間がズレるの、なんとかならないかなあ)


 残念ながら、この時計はあまりいい物じゃないみたいなんだ。

 その証拠に、一ヶ月に一回くらいのペースで針がズレてる。

 まあ、貧乏な両親がくれた物だからそこに期待はしてなかったけどさ。


(時計屋に持っていったら直ったりするのかな?)


 今までは、針がズレる度に自分でネジを回して調整してた。

 でも、これだけ頻繁にズレるって何か根本的な問題なんじゃないの?

 それこそ、プロが解体しないとわからないような。

 ……余計な出費は避けたいけど、仕方ないよね。

 この腕時計は、どうしても長く使い続けたいから。

 僕は家に帰る前に、近くの時計屋に寄ってみることにしたんだ。

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