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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第五十三話
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甘い話には裏がある

「このプログラムにかかっているロックを解除していただきたいのです」

「ロックの解除ですか? どのようなプログラムなのでしょう?」

「……こちらになります。内容については、私も詳しくは知りません」


 僕は、喫茶店で一人の男と向かい合っているよ。

 その男は、小さなメモリーカードを机の上に置く。


「詳しい内容をご存知ではないというのはどういうことでしょう?」

「……これは、死んだ父が私に残したものなのです。厳重にロックされていることから、何か重要なデータが入っていると推測できます。ですが、私はその内容に全く心当たりがない。そして、ロックを解除する術も持ち合わせておりません」

「なるほど、そういうことですか。分かりました。この依頼、お受けいたします」

「ありがとうございます」


 どれだけ厳重なロックかわからないけど、僕に解けないものはないからね。

 時間をもらえれば、どんなに難しい物だって解析してみせるよ。


「その、一つお願いがあるのですが……」

「はい。なんでしょうか?」

「……ロックを解いても、決してその中身を見ないでいただきたいのです」

「出来るだけご要望に添いたいとは思いますが、少し難しいかもしれません。解除したと同時に、情報が僕の目に飛び込んで来る可能性もありますから」

「……それもそうですね。では、見た内容を決して口外しないでいただきたい」

「それは勿論です。信用が物を言う仕事ですから、そのようなことはしませんよ」


 僕は、男に向けてニコリと微笑む。

 まあ、これは半分嘘だけどね。

 こういう依頼の時は、基本的にデータには全て目を通させてもらってるよ。

 もし、反社会的な内容だったら透花さんに報告しなきゃいけないからね。

 知らない間に犯罪の片棒を担がされてるなんて、まっぴらごめんだよ。


「その言葉を聞いて安心しました。報酬は、二回払いでもよろしいでしょうか?」

「はい。二回払いということは、着手金と成功報酬という感じでしょうか」

「……ええ。合わせて、これくらいでお願いしたいと思っています」

「………………………………!?」


 僕は、男が提示してきた額に目を疑ったよ。

 だって、僕があらかじめ伝えておいた相場の十倍だったんだもの。

 この収入があれば、僕としてはすごく助かるって気持ちはあるけどさ。

 目の前の男が、そんな大金を持ってるようにはとても見えないんだよね。

 服装とかもそうだし、上流階級の人独特の洗練された空気だってない。

 ……もしかしてこのデータって、ものすごく重要なものなんじゃないかな。

 他人に内容を見られるのは困るけど、解除できない方がもっと困る。

 つまりこれって、依頼料というよりも口止め料なんじゃないの?

 そんなことを考えながら、僕はまた笑顔を作った。

 ……この人には、もっと色々聞かないといけないなぁ。

 だって、甘い話には裏があるってことを僕は誰よりも知ってるんだから。

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