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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第五十二話
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たまには、ね。

⑮午後十時三十分、透花の私室にて


「珍しく慌ててる透花さんでも見れるかと思ったんだけど、案外普通だね」


 湊人が部屋に入ってきて、開口一番に言った言葉がこれだ。


「そう簡単に湊人くんに弱みを握られるわけにはいかないのですよ」

「ふふふ、それは残念だなぁ」


 あまり残念そうに聞こえないのは、気のせいではないだろう。


「ホワイトデーのお返しなんだけど、実はまだ用意できてないんだ」

「そうなんだ。湊人くんにしては珍しいね」

「季節の関係で、その商品が店頭に並んでなくてね。いつもみたいにネットで買ってもいいんだけど、たまには一緒に買い物に行かない?」

「行きたい! 湊人くんに買い物に誘われる日がくるとは思わなかったよ」

「ふふふ、僕も誰かを買い物に誘う日がくるとは思わなかったよ。多分、五月か六月になるかなぁ。ちょっと時間があるけど、それまで待ってくれる?」

「もちろん大丈夫だよ。何を買いに行くの?」

「それなんだけどね、部屋着用の甚平にしようと思ってるんだ」

「甚平なら、去年の夏にあげなかったっけ?」


 昨年の夏祭りの際に、透花から一色隊全員に浴衣が贈られたのだ。

 この時、湊人だけは部屋着としても使えるように甚平を選択していた。


「予想よりもかなり上等な物だったから、部屋着としては使ってないんだよね」

「なるほど。確かに、着ている姿を見かけないなぁって思っていたんだ」

「だから、部屋着としてちょうどいい甚平を買おうと思って。二人で買って、夏が来たらそれを着て僕の部屋でゲームをしよう。冬の、あの半纏みたいにさ」

「うん! 私、甚平って着たことないから楽しみにしているね」


 透花の笑顔を確認した湊人は、彼女の手を取り指先に口付けた。


「……できれば意味は調べないでほしいんだけどなぁ」

「うーん、そのお願いは聞いてあげられないかも」

「ふふっ、あなたって本当にいい性格してるよね」

「お褒めの言葉をありがとう。でも、湊人くんほどじゃないよ」


 指先へのキス、その意味は、賞賛――――――――――。

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