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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第五十二話
710/780

明るく、長閑な空気を持つ人

⑭午後十時十五分、透花の私室にて


 理玖の次に透花の部屋にやって来たのは、ギターを抱えた虹太だった。


「あれ? 透花さん、顔が真っ赤じゃーん♪」

「……ぱっと見ただけで分かるくらい、赤くなっている?」

「うんうん、この企画を楽しんでもらえてるみたいで嬉しいよ~☆」

「……そうだね。虹太くんの想像以上に楽しませてもらっていると思うよ」

「こんな透花さんを見られるなんて、俺ってばラッキーだなぁ♪」


 虹太は、いつものようにふにゃりとした笑顔を浮かべる。

 それを見ていた透花は、自分の心が落ち着いていくのを感じた。


「まずはこれ、オマケのプレゼントね☆」


 虹太はそう言うと、小さな箱を透花へと渡した。

 それを開けてみると、桃色の和菓子がいくつか並んでいる。


「わあ、かわいい! この香り、桜でも桃でもないね。梅の花かな?」

「だいせいかーい☆ 透花さんなら、やっぱり梅がいいかなって思って♪」

「ふふふ、私、梅干しが大好きだもんね。ありがとう、虹太くん」

「どういたしまして~! でも、本命はコッチだよ~!」


 虹太はギターを構えると、咳払いをした。


「え~、おほん! 透花さんのために歌を作ってきたので、歌います!」

「すごい! 歌を作ったってことは、歌詞も虹太くんが書いたの?」

「そうだよ~。作曲はともかく作詞は初挑戦だからビミョーかもしれないけど、ひろーい心で聴いてもらえると助かりまっす☆ じゃあ、歌うね~!」


 虹太の指が弦を弾き、柔らかなメロディを奏でていく。

 導入部が終わると、そこに虹太の明るく爽やかな声が加わった。

 初めて作詞に挑戦したとは思えないほど、堂々と歌い上げていく。

 “春”を思わせる温かな曲に、透花はいつの間にか聴き入っていた。

 先程までざわついていた心が、静かに凪いでいくのを感じる。


「ご清聴、ありがとうございました~☆」

「とても素敵な曲だね。聴いているだけで優しい気持ちになれる気がするよ」

「ほんと!? 思い切って挑戦してみてよかった~♪」


 歌い終えると、虹太は静かにギターを下ろした。

 そして、透花に近付くと自然な動作で頬にキスをする。


「……虹太くん、ありがとう。なんだかすごく落ち着いたよ」

「あれ!? なんで!? キスって普通ドキドキするものじゃないの~!?」


 晴久、理玖と想定外の出来事の連続に透花は戸惑っていた。

 だが、虹太のおかげで平常心を取り戻せたようだ。

 彼の存在が一色隊の皆に与える影響は、本人の想像よりも大きいのだろう。

 虹太がいる場所の空気は、いつも明るく長閑だ。

 頬へのキス、その意味は、親愛――――――――――。

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