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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第七話 タイムは彼を称賛した
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走れ

「お、お前……! 何してんだよ……!」

「あー、悪い。うっかり実弾入りの方で撃っちまった。でも、獲物には当たんなかったんだから別にいいだろ?」


 リーダーの男は、悪びれもせずにそう言い放つ。


(肩を撃たれた……。でも、あの子に当たらなくてよかった……)


 心は、撃たれた肩を押さえながらアルジャンアルパガに視線を向ける。

 彼は、恐怖で足が竦んでしまっているようだ。


(痛い……)


 傷口に触れた手を見ると、そこは真っ赤に染まっていた。

 思わず地面に膝をつきそうになるが、なんとか自分を奮い起こすとアルパカの方へと進んでいく。


(この子はもう、自分の力では逃げれない……。それなら僕が……!)


 心はアルパカを抱き上げると、森の奥へと走り出した。

 驚きでアルパカは、心の手に噛みついてしまう。

 手に痛みが走ったものの、心は彼を手放すことはせずに駆け続けた。

 アルパカは抵抗するように心の手に噛みつき続けていたが、今の心にはそれをどうにかできるような余裕はなかった。


「……おーおー、頑張るねぇ」


 リーダーの男が、今度は麻酔銃の銃口を心へと向ける。


「……しっかし、いつまで続くかな!」


 放たれた麻酔針は、正確に心の背中を捉えた。

 しかし心は、構わずに走り続ける。


「な、なんだあいつ……! 麻酔銃が効かないのか……!?」

「お、おい、もうやめようぜ……!」

「……ここまで来て引き下がれっかよ! 一本で効かないなら、何本も撃ち込めばいい話だろうが!」


 仲間の言葉に耳を貸さず、リーダーの男は心に麻酔銃を撃ち続ける。

 二本、三本と麻酔針が体に刺さる度に、心は自分の体の感覚が徐々になくなっていくのを感じた。

 そして遂に、地面に倒れ込んでしまう。

 それでも心はアルパカのことを守ろうと、彼を抱き込みながら小さく丸まる。

 アルパカからの抵抗は、いつの間にかなくなっていた。


「……ったく、世話焼かせやがって。てめーの血でお宝が汚れんだろが」


 男がそう言いながら心に近付いてくる足音が、まるでどこか遠い世界の出来事のように聞こえる。


(……この子のこと、守れなかった。透花さんとの約束も、破っちゃったなぁ……)


 心が静かに目を閉じようとしたその時、聞き慣れた優しい声がやけに鮮明に自分の耳に届いたのだ。


「……心くん、よく頑張ったね」


 閉じかけた目を開き視線だけをそちらに向けると、そこには透花が立っていた――――――――――。

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