貫く
「……もう、狩りは止めてください」
極力物音を立てないように男たちに近付くと、心は彼らに声をかけた。
また、麻酔銃を撃たれるわけにはいかないからだ。
急に現れた心の存在に、男たちは慌てふためく。
「お、お前一体どこから……!?」
「何者だ……!?」
「……僕の名前は、結城心。一色隊に所属する者です」
「なにぃ!? 一色隊って、確か王都の……」
「王都の軍人が、なぜこんな場所にいる!?」
「……あなた方がしようとしていることは、国の法で禁じられているはずです。今すぐ引き返してください」
男たちとは対照的に、心は冷静に言葉を紡ぐ。
「お、おいこれってまずいんじゃ……」
「あ、あぁ……。こいつが上に連絡したら俺たちは……」
「……仕方ねぇよ。もう諦めて帰ろうぜ!」
「……おめーら、こんなガキ一人に慌てんじゃねーよ」
一人だけ、心の説得に耳を貸さない男がいた。
恐らく、彼らのリーダーなのだろう。
不敵な笑みを浮かべると、銃を構えながら心の前までやって来る。
「こいつさえいなくなれば、俺らはゆーっくりとお宝探しができるんだぜ? 始末しちまえば問題ないだろ」
「始末ってお前、何言ってるんだよ……」
「こんなこともあろうかと、麻酔銃以外もちゃーんと持ってきてたんだよなぁ」
そう言いながら、銃口を心に向ける。
透花との約束が頭をよぎったものの、不思議と逃げるという選択肢は思い浮かばなかった。
「まさかお前、その銃……!?」
「やめろ! 殺すなんて……!」
「邪魔者はさくっと排除して、宝探しの続きといこうや。……じゃあな」
男が引き金を引こうとした、その時のことだった。
心がやって来た方向から、カサリと音がしたのだ。
全員がそちらに視線を向けると、そこには先程のアルジャンアルパガがいた。
怪我をしている足を引きずりながら、なんとかここまでやって来たようだ。
心たちの様子が気になり、見にきたのだろうか。
「……探す手間が省けたな。お宝のお出ましだ!」
心の方を向いていた銃口が、アルパカへと向く。
リーダーの男は今自分が持っている銃が実弾入りのものということをすっかり忘れ、引き金を引いてしまった。
(元々彼は怪我をしてたんだ……。あの足じゃ避けれない……!)
心は咄嗟に男とアルパカの間に立つ。
その銃弾は、確かに心の体を貫いたのだった――――――――――。