友と未来の約束を
「晴久様、一色様、本当にありがとうございました!」
「このご恩は、一生忘れません!」
「まさか、お父様が私たちの交際を認めてくださるなんて……!」
「逃げ出さずに話をしてみて、本当によかったです!」
その後、パーティーは中止になりました。
ありがたいことに愛甲社長と天川社長が場を仕切ってくれたので、そこまで大きな混乱は起こらなかったみたいです。
会場を出た僕は透花さんと合流し、愛甲さんと天川さんと話しています。
「僕は何もしていませんよ。お二人が勇気を出した結果だと思います」
「お二人とも、とてもかっこよかったですよ。お幸せに」
「ありがとうございます! 他の方々にもよろしくお伝えください!」
天川さんが透花さんと話していると、愛甲さんが小声で話しかけてきました。
「晴久様、少しよろしいでしょうか?」
「はい。どうかしましたか?」
「その、いつか晴久様のお料理を食べさせていただくことは可能でしょうか?」
「そういえば、愛甲さんにはまだ振る舞ったことがなかったですね。もちろんいいですよ。僕は透花さんの屋敷にいるので、いつでも訪ねてきてください」
「ありがとうございます。それで、あの……。ご迷惑でなければ、私に料理を教えていただけませんか? やったことはないのですが、挑戦してみたくて……」
愛甲さんは生粋のお嬢様ですから、台所に立ったこともないんでしょう。
僕は恥ずかしそうに言う愛甲さんに、微笑んで返事をします。
「花嫁修業ですね。僕でよければ、ぜひお手伝いさせてください」
「ありがとうございます……!」
「僕、料理だけじゃなくて家事全般得意なんですよ」
「まあ! そちらもご教示いただけると幸いですわ!」
こうして僕は、新しくできた友人と未来の約束をしました。
愛甲さんが一色邸を訪ねてくるのは、そう遠い日ではないのでしょう。
会話を終えると、お二人は丁寧なお辞儀をしてから去っていきます。
「さて、私たちも帰ろうか」
「……透花さんと一緒に行きたい場所があるのですが、お時間はありますか?」
「うん、もちろん。どこに行くの?」
「ありがとうございます。……透花さんと初めて会った場所に行きたいんです」
僕がこの地を訪れることは、もう二度とないかもしれません。
……あの崖から見える美しい夕日を、透花さんと一緒に見たい。
そう思った僕は、運命の場所へと透花さんを案内したのでした――――――――――。




