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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第五十一話
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非愛情確認

「先程も言いましたが、僕は実家に戻るつもりはありません」

「お父さんとお母さんを困らせるようなことを言わないで……!」

「こ、この親不孝者が……!」


 母は瞳に涙を浮かべ、父は怒りで顔を歪めています。

 ……二人の言う通り、僕は親不孝な息子なんでしょう。


「親不孝者でも構いません。……あなたたちが僕に戻ってきて欲しいのは、僕があなたたちの息子だからじゃないですよね。僕が、桜庭さんという高名な美食家に認められた料理人だからです。……違いますか?」

「「………………………………」」


 僕からの質問に、両親が口を開くことはありませんでした。

 ……その沈黙が、僕の考えが図星であることを物語っているのでしょう。


「それならば、僕も料理人としてお断りします」

「た、たまたまあなたが料理人だっただけだわ……!」

「そうだ! 料理人である前に、お前は私たちの息子だろう!?」

「……では、僕の料理についてどう思いますか?」

「晴久の料理はとても素晴らしいわ!」

「あの桜庭廉太郎に認められているんだからな!」

「……具体的には、どういうところがでしょうか」

「そ、それは……」

「……素晴らしいものは素晴らしい! それ以外の感想はない!」

「そうですか……」


 ……そう言うしか、ないですよね。

 だって、二人は僕の料理を一度も食べたことがないんですから……。

 ……親に愛されていないことは、ちゃんとわかっていたつもりでした。

 でも、こうして改めて確認するのはやっぱり辛いものがありますね……。

 僕の視線は、いつの間にか会場内にいる透花さんを探していました。

 目が合うと、透花さんは僕に向けて口をパクパクと動かしています。


(……ありがとうございます、透花さん)


 何て言ったのかはわからないけど、それだけで勇気を貰えた気がするんです。

 ……悲しい気持ちは消えないけど、ここで凹んでいるわけにはいきません。

 僕の料理を美味しいと言ってくれるみなさんが待つ、あの家に帰りたいです。

 ……そのためには、苦しくてももう一頑張りしないとダメですよね。

 僕は透花さんから視線を外すと、再び両親を見据えたのでした――――――――――。

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