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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第五十一話
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溺愛パパの大暴走

「桔梗、パパの娘をやめたいのか……!?」

「……お父様が潤哉様との関係を認めてくださらないのであれば、そうする他ありませんわ。私はそれくらい、潤哉様を愛しているのです」

「どうしても、天川の息子じゃないとダメなのか……?」

「ええ。私の伴侶は、この方以外に考えられません」

「桔梗が天川の息子と結婚するなんて絶対に嫌だ! でも、私の娘じゃなくなるなんてもっと嫌だー! あああ、どうすればいいんだー!!」


 ……ええと、これは一体どういうことでしょうか。

 愛甲社長は突然大声で叫んだかと思うと、その場に崩れ落ちてしまいました。

 そんな社長に、後ろからやって来た和服の女性が寄り添います。


「パパ、みなさんの前でそんなみっともないところを見せないでくださいな」

「ママ……! だって、だって桔梗が……! 私の娘をやめるって……!」

「だから言ったじゃありませんか。娘のことを愛しているのなら、本当に好きな相手と結婚させてあげるのが一番だって。政略結婚なんて幸せになれませんよ」

「でも、私とママはそれでもこんなに幸せじゃないか……!」

「自分がそうだからって、娘もそうだとは限らないでしょう。あの子は確かに私たちの娘だけれど、私たちとは違う人間なんですから」

「遠野くんとの結婚の話を持ち出しても、桔梗は何も言わずに受け入れたから……! だから私はてっきり、天川の息子との付き合いは人に言えるようなものじゃないって思ったんだ! 桔梗が一方的に弄ばれているって! それなら、こちらが決めた誠実な相手と結婚させる方がいいって思ったんだよー!!」

「はいはい、あなたがどんな風に考えていたのかわかりましたよ。でも、それは間違いだったでしょう? それなら、二人の仲を認めない理由はないですよね」


 和服の女性は、どうやら愛甲さんのお母さんみたいです。

 愛甲さんは、子どものように声を上げる社長を見て驚いています。

 ……これは、娘である愛甲さんも知らなかった一面なんでしょう。

 僕も、社長は厳格な人だと聞いていたのでびっくりです……。

 今回の件は、娘を溺愛している父親の暴走ということでしょうか……?


「……桔梗、そんなに天川の息子を愛しているのかい?」

「は、はい。心からお慕いしています」

「二人の仲を認めなかったら、パパの娘をやめるくらいに……?」

「……ええ」

「……わかった! 相手がこの男の息子だっていうのがほんっとーに気に入らないけど、桔梗に嫌われる方がもっと嫌だから認める!」

「お父様……! ありがとうございます!!」


 愛甲さんは、溢れんばかりの笑顔を浮かべます。

 その表情を見て、複雑な表情をしていた愛甲社長も嬉しそうに笑いました。

 愛甲さんのお母さんは、そんな二人を優しい微笑みで見守っています。

 ……自分の気持ちを伝えるって、本当に大切なことだと改めて思いました。

 そうすれば、こんな風に道が拓ける場合もあるんですから……。


「こいつが認めても、私は絶対に認めないからな!」


 ……このいい雰囲気を壊すように、天川社長が大きな声でそう言いました。

 こちらは、愛甲社長のように簡単にはいかないでしょうね……。

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