話の流れを変える一言
「桔梗、どういうことだい……!? お前は遠野くんと結婚するんだろう!?」
「潤哉、何をしている! すぐにそこから下りてこちらに来い!」
愛甲社長と天川社長が駆け寄ってきますが、舞台に上ることはできません。
みなさんがざわついている間に、透花さんが階段を外してしまいましたから。
お二人は、焦った様子で僕たちのことを見上げています。
「お父様、先程申し上げた通りですわ。私は心から愛する方と結婚いたします。既にご存知でしょうけれど、それがこちらの天川潤哉様です」
「父さん、僕も彼女と同じ気持ちです。愛甲桔梗さんを愛しています」
会場内のざわめきが、更に大きくなりました。
ライバルグループの御曹司と令嬢がお付き合いをしているなんて、みなさんは考えもしなかったでしょうから。
「どうか、僕たちの関係を認めてはいただけないでしょうか」
「私たちは、本気で愛し合っているのです」
「認められるわけないじゃないか! お前は私の大切な娘なんだぞ! 他の男ならともかく、この男の息子だけは絶対にダメだ……!」
「その言葉、そっくりそのままお前に返すぞ! 私だって認められない! 潤哉は天川グループの大切な跡取りだからな! 誰か、誰かいないのか!? 誰でもいいから止めろ! 潤哉を舞台から引きずり下ろせ……!!」
社長たちは、全くお二人の話を聞いてくれません。
……でも、愛甲さんと天川さんは諦めませんでした。
「認めてくださらないなら、私はお父様の娘をやめますわ!」
「僕もです! 天川の名を捨てて、二人で遠い地で暮らします!」
「そんなことが許されると思っ……!?」
「……ダメだー! パパの娘をやめるなんて、そんなこと言わないでくれー!」
天川社長の言葉を遮り、愛甲社長が大声でそう叫びました。
……僕はこの時に、感じたんです。
話の流れが、確実に変わったのを――――――――――。