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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第七話 タイムは彼を称賛した
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恐怖心を煽る

 よく見るとアルジャンアルパガは、ところどころ怪我をしているようだ。

 森の中を逃げ回るうちに、木の枝などで引っ掻いてしまったのだろう。


(……理玖さんに貰った薬って、動物にも効くのかな)


 心はリュックから薬を取り出すと、彼に声をかけた。

 それは、任務前に渡された理玖お手製のものである。


「……おいで。傷の手当てをしよう」


 しかし彼は、震えたままそこを動くことはなかった。


(……もしかして、麻酔銃に撃たれて動けないのかな)


 不思議に思った心は、ゆっくりと近付いていく。

 すると彼の瞳が、恐怖だけではなく敵意を含んだものに変わる。

 震える足でなんとか立ち上がると、全身の毛を逆立てて威嚇の姿勢を示した。


(……動けないんじゃない。僕のことが、怖いんだ……)


 今まで動物に拒否されたことがなかった心は、少なからず動揺した。


(人に追いかけられたせいでこんなに傷だらけになっちゃったんだから、怖いと思われても仕方ないよね……)


 だが、彼の心情を察した心は近付くのを止め、その場に腰を下ろす。


「……僕は、君を捕まえにきたんじゃないよ。君を、人間たちから逃がしたいと思ったんだ。その証拠に、嫌がるならこれ以上は近付かない」


 柔らかな声で話しかけるも、彼の警戒が解けることはなかった。


「……お腹は空いてない? これ、君が食べれるかどうかわからないけど……」


 心は手持ちの蜂蜜を落ちていた葉の上に乗せると、自分とアルパカの間に置く。

 嗅ぎ慣れない匂いに興味を示してはいるようだが、近付いてくる様子はない。


(どうしようかな……)


 心は後ろの木に背中を預けると、目を閉じる。

 そして、これから自分が何をすべきかについて考えるのだった。

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