僕たちは味方です
「……もう少し、お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
それは、少しの沈黙の後に愛甲さんが発した言葉でした。
そんな彼女の顔を、天川さんは複雑そうな表情で見ています。
「桔梗さん……」
「……潤哉様、一色様の仰っていることは尤もだと思うのです」
「確かにそうかもしれないが……」
「……私、気付いてしまったんです。もしここで私たちがいなくなったら、色々と協力してくださった一色隊の皆様にご迷惑をかけてしまうのではないかと。この繋がりを知れば、お父様たちが黙っているはずありませんもの……」
「あっ……!」
「それは、あってはならないことですわ。皆様は、私たちの恩人なのですから」
愛甲さんのまっすぐな瞳に、天川さんは心を動かされたみたいです。
「……先程までは、本当に自分たちのことしか考えていませんでした。一色様のお話を聞いて、少し冷静になれましたわ。この状態で、もう少し話したいのです」
「……そうですね。一色様、あちらの部屋を借りてもよろしいですか?」
愛甲さんの言葉に小さく頷くと、天川さんは隣の部屋を指差します。
「はい、どうぞ使ってください。色々と言ってしまいましたが、気にし過ぎないでくださいね。お二人が一番幸せになれる方法がご家族から離れることだというのなら、引き続きサポートもさせていただきますから」
「僕も透花さんと同じ気持ちです。僕たちは、お二人の味方です」
「それから、一色隊が今回の計画に関与していることをご家族が知ることは絶対にありません。だから、そこはご心配なさらずとも大丈夫ですよ」
僕たちがそう言うと、お二人の表情が少し柔らかくなりました。
愛甲さんと天川さんが隣の部屋に入ると、扉がぱたんと閉まります。
……話し合いが終わって次にこの扉が開いた時、お二人がどんな決断をしていたとしても僕はそれを受け入れるつもりです。
僕と透花さんは会話もせずに、静かにその瞬間を待ったのでした――――――――――。




