優しくてかっこいい、みんなの隣に立ちたいから。
「これはあくまでも私の意見なので、最終的にはお二人が一番幸せになれる方法を選ばれるのがよいでしょう。でも、最後にもう一つだけ言わせてください」
そう言うと透花さんは、ちらりと僕の方を見ました。
「……少し、ハルくんの昔話をさせてもらっても大丈夫かな?」
「僕の昔話ですか? 愛甲さんは既に知っていますし、別に構いませんよ」
「ありがとう」
僕から視線を逸らすと、透花さんは二人へと向き直ります。
その光景を、僕は何をするわけでもなく静かに眺めていました。
「ハルくんは、幼い頃からなかなかご両親に話を聞いてもらえませんでした」
透花さんの言葉を聞いた愛甲さんの方が、小さく揺れます。
……僕が話した時も、かなり感情移入して聞いてくれましたから。
「自分の夢を必死に訴えても、ご両親の耳に届かない日々が十年以上続きました。でも、とあるきっかけでどうしてもそれ以上は頑張れなくなってしまって……。そんな時に出会った私のところで、今は働いてもらっているんです」
……そうです、僕には両親と話すことから逃げ出した過去があります。
「話を聞いてもらえない苦しみを誰よりも知っているはずのハルくんが、今回実家まで足を運んだ理由は何だと思いますか? これは私の推測になるのですが……。きっとまだ、ご両親と話すことを諦めていないからだと思います」
僕の心はおじいちゃんとおばあちゃんが死んだ時に一度折れてしまいました。
……でも、一色隊のみんなと過ごす内にまた立ち上がれたんです。
一色隊のみんなは、優しくてかっこいい人ばかりですから。
そんなみんなの隣に立っても、恥ずかしくない自分になりたい。
……これ以上逃げたくなかったから、僕は戻ってきました。
「そんなハルくんの前で、話もしないで逃げないでほしいんです。それは、ハルくんの勇気や頑張りを否定することに繋がってしまうと感じますから」
透花さんが言い終えると、僕たちの間に静寂が流れます。
……僕と同じように、透花さんも待っているんでしょう。
愛甲さんと天川さんの、次の言葉を――――――――――。