逃げる必要なんて、ない。
数時間が経ち、様々な写真を撮り終えた僕たちはコテージへと戻りました。
中に入ると、愛甲さんと天川さんは手を繋いで仲睦まじそうにしています。
二人の表情が、先程までと比べ物にならないくらい生き生きしているんです。
ほんの数時間でしたが、納得のいく話し合いができたみたいでよかったです。
僕たちは挨拶もそこそこに、まずは湊人くんに送る写真を撮りました。
それを終えると、透花さんが二人に声をかけます。
「その様子だと、しっかりとお二人の未来について話せたみたいですね」
「一色様、そして晴久様、今回は本当にありがとうございました……!」
「一色隊の皆様に協力していただけなかったら、もう二度と桔梗さんに会うこともできませんでした……!」
「か、顔を上げてください! お二人が幸せになれるなら、それでいいんです」
「ハルくんの言う通りですよ。これからお二人は、どうするのですか?」
透花さんからの質問に、愛甲さんと天川さんは顔を見合わせます。
そして、相槌を打つように頷くと真剣な表情で口を開きました。
「……僕たちは、この地を離れようと思います」
「……私たちのことを知る者が誰もいない土地で暮らしていく予定です」
これは、駆け落ちということですよね……?
お互いの立場を考えれば、仕方のないことなのかもしれません。
お二人のお父さんを説得するのは、とても大変でしょうから……。
でも、本当にこれでいいんでしょうか……?
「……お二人とも、ご家族ときちんと話をしなくて本当によいのですか? あなたたちは、お互いに惹かれた相手を愛しただけじゃないですか。何も悪いことをしていないのだから、逃げる必要なんてないと思いますよ」
透花さんの言葉は、二人にとって何よりも難しいことです。
父に話を聞いてもらえない気持ちは、僕もよくわかりますから……。
……でも、僕も全く同じ疑問を抱えていました。
すごく大変なことだと思うけど、ここで逃げちゃダメだと思うんです――――――――――。