安らぎのひととき
「それではこれから、ギャルカップルがハルくんたちに観光地を案内してもらった証拠を残しにいこうと思います。そんなに疑われてはいないと思うけれど、念のためね。ハルくん、今着ているコートを脱いでこっちを着てもらえるかな?」
「これ、柊平さんのコートですか?」
「うん。少し大きいかもしれないけれど、元々丈が長いものだしいけるはずだよ」
「……あまりこういう服は着ないので、なんだか新鮮ですね」
市街地が近付いてきたところで、透花さんが僕にコートを渡してくれます。
僕は着ていたダッフルコートを脱ぐと、そちらに袖を通しました。
「よく似合っているよ。あとは、この帽子を被ってダテ眼鏡をかければ完璧! もしハルくんを知っている人が見ても、絶対に分からないはずだから」
「は、はあ……」
僕は言われるがままに帽子を被り、眼鏡をかけました。
透花さんも着ていた派手なコートを脱ぎ、いつもの服を羽織ります。
「この辺りの観光地をいくつか回って、そこの写真を撮ってこようと思うの。その背景に四人の姿を合成したら、ちゃんと案内してもらった証拠になるでしょう? 写真が撮れたら、湊人くんにデータを送る約束になっているんだ」
「なるほど。でも、透花さんも天川さんも先程までとは顔が違いますよね……?」
「この顔じゃあホテルに戻れないから、コテージに戻ったらささっとメイクをし直すよ。やり方は颯くんに教わってきたし。まあ、いざとなれば肌の色や目の大きさなんかもパソコンで変えられちゃうみたいだから大丈夫だよ」
「そうなんですね。最近の技術はすごいです」
「本当だよね。コテージに戻ったら、四人の集合写真を撮らせてもらうね」
「わかりました。僕は、観光地を案内すればいいですか?」
「うん。せっかくハルくんの故郷に来たんだし、写真を撮るだけではなく普通に観光もしたいな。あの二人には、話す時間がいくらあっても足りないだろうし」
「確かにそうですね。柊平さん、次の交差点を右に曲がってもらえますか? この近くに大きな水族館があるので、まずはそこから行きましょう」
「了解した」
こうして僕たちは、短い時間ですが観光を楽しむことになりました。
透花さんと柊平さんと過ごしたことで、僕は久しぶりに心が休まっているのを感じたのでした――――――――――。