こちらが恥ずかしくなってしまうほどの
車が止まったのは、山奥にあるコテージの前でした。
夏は多くの観光客が訪れるこの場所ですが、冬なので人の気配はありません。
「人の目を気にせずに、ゆっくりと話せる場所を用意しました。どうぞ」
透花さんに案内されながら、僕たちは建物の中に足を踏み入れます。
二階建てのコテージは、手入れが行き届いていてとても綺麗です。
「その顔じゃあ、落ち着いて話も出来ませんよね。洗面所がありますから、顔を洗っていつもの天川さんに戻りましょう。私もメイクを落とします」
そう言うと、透花さんと天川さんは洗面所に入っていきます。
車の中では僕が真ん中に座ってしまったので、愛甲さんと天川さんはお互いを気にしている様子ではあったのですがあまり話せなかったんですよね……。
「愛甲さん、突然のことで驚きましたよね。大丈夫ですか?」
「ありがとうございます。平気ですわ。その、潤哉様の風貌に驚きましたけれど、一緒に食事をして分かりました。あの美しい所作は、間違いなく潤哉様です」
「僕も、透花さんの見た目にはびっくりしました。僕の仲間に、髪の毛をセットしたり、化粧をしたりするのが得意な子がいるんです。多分、その子の力でお二人ともいつもとは違う容姿になっているんだと思いますよ」
「まあ、そのような方がいらっしゃるのですね……!」
愛甲さんと話をしていると、洗面所の扉が開きました。
そこから、黒髪の爽やかな男性が出てきます。
これが、天川さんの素顔なんですね。
「桔梗さん……!」
「潤哉様……!」
駆け寄った二人は、お互いの存在を確かめ合うように抱き合います。
あまりにも熱い抱擁に、僕は自分の頬が熱を持つのを感じました。
「ハルくん、二人だけにしてあげよう」
そんな僕の肩を、透花さんが静かに叩きました。
彼女の顔も、僕がいつも見ている自然な美しさに戻っています。
透花さんはメモに何かを書き、それを二人の目につくようなテーブルの上に置くと、僕と一緒にコテージを出たのでした――――――――――。