見覚えのあり過ぎる運転手
「ここに行ってみたいんだけど!」
お店から出ると、透花さんが父に貰った地図を取り出します。
彼女が指していたのは、ここから少し離れた場所でした。
「この距離は、歩くとなると少し大変そうですね」
「じゃあ、タクシー乗ろうよ! ちょうどあそこに停まってるし」
透花さんはそう言うと、近くに停車していたタクシーの方に歩いていきます。
運転手の方に話をすると、腕を使い頭の上で大きく丸を作りました。
「だいじょぶだってー! ほら、乗ろー!」
透花さんに促され、僕たちはタクシーに乗り込みます。
助手席に透花さん、後部座席には愛甲さん、僕、天川さんの順番で座りました。
「じゃあ、例の場所までお願いね」
「かしこまりました」
いつもの口調の透花さんと話すその声に、僕は聞き覚えがありました。
運転席を覗き込んでみると、そこにいたのは柊平さんだったんです……!
「しゅ、柊平さん……!? どうしてここに……!?」
「詳しい説明は、後で隊長から聞いてくれ。出発するぞ」
車が、どこかに向かって走り出します。
それは、先程透花さんが行きたいと言っていた方向とは正反対でした――――――――――。




