表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第五十話
670/780

耳に優しく馴染む音

 それは、両親のホテルがある程度遠ざかった時のことでした。

 女性は僕と愛甲さんの首を離すと、小さな声でこう言ったのです。


「無理矢理連れ出すような真似をしてしまってごめんなさい」

「え……!?」


 ……その声には、先程までのハスキーさはありません。

 それは、僕がいつも聞いている耳に優しく馴染む音でした。

 突然女性の声色が変わったことに、愛甲さんはとても驚いています。


「でも、安心してください。私はあなたの味方です」

「あなたは、一体……?」

「申し遅れました。私、一色透花と申します」

「あなたが、一色様……!? じゃあ、もしかしてこの男性は……!」

「はい、天川潤哉さんですよ」

「………………………………!!」


 愛甲さんは、目を見開いて天川さんを見つめています。

 天川さんは口を開こうとしましたが、それは透花さんに遮られてしまいます。


「ここでの会話は人目につきます。まずは移動しましょう。ハルくん」

「はい。なんでしょうか?」

「ハルくんが顔馴染みのお店に案内してくれないかな」

「僕の顔馴染みのお店ですか? それでは話がしづらいのでは……」

「四人で食事をしたってアリバイが欲しいから、ハルくんやお父さんをよく知っているお店がいいんだ。話し合いは別の場所を用意しているから大丈夫だよ」

「なるほど。わかりました。では、こちらへどうぞ」

「やったー! なんの店? めっちゃお腹空いたから早く食べたーい」


 そう言った透花さんの口調や声は、先程までのギャルに戻っています。

 ……正体を知っていても、今時の若い女性にしか見えないから不思議です。

 透花さんの完璧な演技に感心ながら、僕は祖父母に連れられてよく行っていたお店にみなさんを案内したのでした――――――――――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ