優しいんじゃなくて、自分勝手なだけですよ。
「どうして、ここまでしてくださるのですか……?」
「どういうことでしょう?」
「……私たちは、今日は初めて顔を合わせましたわ。出会って間もない私の身を案じ、潤哉様との仲を取り持ってくださろうとするなんて誰にでもできることではございません。どうして、そこまで優しくしてくださるのですか……?」
「優しいとかじゃありませんよ。……昔の僕と、似てるなぁって思ったんです」
「昔の晴久様と……?」
「はい。現状をどうにかしたいという気持ちはあるのに、どうすればいいのかわからなかった頃の自分です。僕は、恩人のおかげで大きな一歩を踏み出すことができました。だから、自分と同じような境遇で苦しんでいる愛甲さんの力になりたいんです。……僕が、あの時彼女に救ってもらったように」
愛甲さんの流す涙の量が、少しずつ減っていきます。
それが完全に止まった時、彼女の瞳には光が灯っていました。
「……晴久様、ありがとうございます。あなたは自分のことを優しくはないと仰いましたが、私にとってあなたはとても優しい方ですわ。……私、もう一度潤哉様にお会いしたいです。ちゃんとお話をして、二人の未来について考えたいのです。……あなたのお力を、お借りしてもよろしいですか?」
「はい。僕に、あなたの明るい未来のためのお手伝いをさせてください」
「ありがとうございます……! 本当に、ありがとうございます……!!」
愛甲さんは、何度も頭を下げて僕にお礼を言ってくれます。
この時に、僕は初めて彼女の心からの笑顔を見た気がしました。
こうして僕たちは、お互いの望む未来のために動き始めたのでした――――――――――。