思いもよらない客人
この日も、僕はいつもと変わらない一日を送るはずでした。
みなさんを見送ってから一通りの家事を終えると、家庭菜園に向かいます。
最近、じゃがいもやニンジンを植えたんですよ。
収穫する日を楽しみに、毎日お世話しているんです。
「ぱかおくん、今日もよろしくお願いしますね」
僕が庭に出ると、どこからともなくぱかおくんがやって来ます。
害虫がいたら追い払ってくれたり、雑草を食べてくれたり、ぱかおくんは僕の野菜作りのパートナーなんですよ。
(すっかり、火傷も治りましたね。本当によかったです)
ぱかおくんは、少し前に大火傷を負いました。
自慢の毛も全て燃えてしまい、包帯を巻かれた姿はとても痛々しかったです。
でも、今の彼の体には綺麗な銀色の毛が生えそろっています。
そのふわふわとした愛らしい姿は、見ているだけで心が和むんです。
「ハルくん、お疲れ~! お客さんが来てるよ~!」
「虹太くん、お疲れ様です。えっと、僕にですか?」
「うん☆ 応接間に通しておいたから~」
「ありがとうございます。すぐに向かいますね」
ぱかおくんと一緒に作業をしていると、虹太くんが屋敷から出てきました。
(僕にお客さんって、雅紀くんでしょうか? いえ、雅紀くんなら事前に連絡をくれますし、虹太くんも彼だって言いますよね。一体、誰なんでしょう?)
僕は作業を一旦止めると、応接室に向かいます。
ここを訪ねてくれるような友人は、雅紀くん以外に思い付きません。
僕はあまり社交的な性格ではないので、友達が多くはないんです。
他に友人と呼べるのは、軍本部の食堂で働く女性たちくらいでしょうか。
ですが、彼女たちが僕に会うために屋敷まで来るとは考えにくいですし……。
「お待たせしました。遠野晴久です」
応接室に着くと、僕はノックをしてからゆっくりと扉を開けます。
――――――――――ソファに座る人物を見て、思わず息を飲みました。
「おかあ、さん……」
そこには、故郷を出てから一度も連絡をとっていなかった、そしてもう二度と会うことはないと思っていた、母の姿があったんです――――――――――。