半纏とクッキーは、相性バツグンなのです。
⑮午後十一時三十分、自室にて
「湊人くん、こんばんは」
「いらっしゃい、透花さん。今日のスープ、とても美味しかったなあ」
「湊人くんが料理の味を褒めてくれるのって珍しいね。嬉しいよ」
「まあ、僕は食べられる物は何でも美味しく感じるからね」
「これもそう思ってもらえるといいのだけれど」
透花が次に向かったのは、湊人の部屋だ。
彼に渡された紫色のリボンがかかった袋は、それほど重さはないようだ。
「ありがとう。中身は何かな?」
「チョコクリームを挟んだクッキーにしたよ。ゲームをしながら食べられるように、片手でつまめて、よそ見をしていても零れないものにしたんだ」
「気遣い、感謝するよ。早速、今日の夜食にさせてもらおうかな」
「今晩は徹夜するの?」
「そのつもりだよ。明日は休みだからね」
「精が出るね。また、私も一緒にゲームしたいなぁ」
「今日は休みだったから、明日は仕事でしょ? また今度ね」
「うん。それにしても湊人くん、その格好すごくいいね」
湊人は、暖かそうな青い半纏を羽織っていた。
自室にいる時のリラックスした彼は、いつもとは別人のようだ。
「さすが透花さん、見る目あるね。暖かいし軽いし、気に入ってるんだ」
「機能的なんだね。私も欲しいかも」
「じゃあ、僕が買ったサイトで注文しておくよ。色はどうする?」
「わあ、ありがとう! 湊人くんが青だから、私は赤にしようかな」
「赤だね、了解。すぐに注文すれば、明後日には届くと思うよ」
「届いたら、湊人くんの部屋に置いておいてもらうことはできる?」
「別に大丈夫だけど、なんで?」
「今度一緒にゲームをする時に、初めて着たいから!」
「そういうことね。じゃあ半纏は、その日を楽しみに僕が預かっておくよ」
「お願いします。それじゃあ、ゲーム楽しんでね」
「うん。クッキー、ありがとね」
「どういたしまして」
透花が部屋を出て行くと、湊人はすぐにパソコンに向かった。
そして、透花が所望していた赤い半纏をクリック一つで注文する。
それから、先程貰った袋を開け、中にあるクッキーを一つ食べてみる。
(うん、美味しい。こんな夜食があったら、ゲームが捗っちゃうよ)
口内に広がったのは、さっぱりとした後を引く甘さだった。
湊人はその後、クッキーをお供に一晩中ゲームに勤しんだのだった――――――――――。