柔らかな時間を、君と
⑬午後十時、自室にて
「柊平さん、こんばんは」
「ご足労おかけしまして、申し訳ありません。夕飯、ごちそうさまでした」
「いえいえ、どっちも私が好きでやっていることだからね。はい、これどうぞ」
「……頂戴いたします」
透花が次に向かったのは、柊平の部屋だ。
柊平は、恭しい手付きで白い箱を受け取った。
「……開けてもよろしいでしょうか?」
「うん、もちろん。食べて感想を聞かせてもらえると嬉しいな」
「かしこまりました。では、いただきます」
青いリボンを解いて蓋を開けると、そこにはボンボンショコラが並んでいた。
早速食べてみると、芳醇で華やかな香りが口いっぱいに広がっていく。
「……これは、シャンパンですか?」
「うん。柊平さんにあげるなら、やっぱりお酒が入ったものかなって」
「ウイスキー入りなら食べたことはありますが、シャンパンは初めてです」
「最近は、シャンパン入りのトリュフとかもあるらしいよ」
「……そうなのですね。とても、美味しいです」
「よかった。残ったシャンパンがあるのだけれど、少し晩酌しない?」
そう言うと透花は、どこからかシャンパンボトルとグラスを取り出した。
「……はい。ぜひ、ご一緒させてください」
「ありがとう。部屋に入っても構わないかな? それとも、リビングにする?」
「……隊長が不快にならない程度には整頓しておりますので、どうぞ」
柊平は、隊員の中で誰よりも片付いた部屋に透花を招き入れる。
二人はその後、ボトルが空になるまで穏やかな時間を過ごした。
柊平がクールながらにどこか柔らかな空気を纏っていたのは、アルコールのせいだけではないのだろう――――――――――。