あなたの助けになりたい
⑫午後九時三十分、自室にて
「蒼一朗さん、こんばんは」
「おう。夕飯、うまかったぜ」
「それはよかった。はい、これどうぞ」
「どうも」
透花が次に向かったのは、蒼一朗の部屋だ。
赤いリボンを解いて袋を開くと、そこにはブラウニーが入っていた。
「おー、うまそうじゃん」
「ダークチョコレートで作ったから、甘さ控えめだよ。チョコレートって、筋トレの前後に摂取すると疲れにくくなったり、疲労回復が早くなるんだって」
「そうなのか。じゃあ、明日のトレーニングの時に食うわ」
「うん。中に入ってる胡桃も、筋トレには効果的だよ」
蒼一朗は安心したように頬を掻くと、袋の口を閉じた。
「なんつーか、予想よりも普通で安心したわ」
「どんなものを想像してたの?」
「いや、キッチンにチョコ味のプロテインがあったからさ。それを使った菓子になるんじゃねーかと思ってた。……まさか、中に混ぜ込んであんのか?」
「ううん、入っていないよ。一応、最後まで迷ったけど」
「おいおい、迷ったのかよ」
「冗談だよ。蒼一朗さん、プロテインは普段から嫌ってほど飲んでいるからね。直接的じゃなくて、間接的に筋トレの手助けになるものにしてみました」
「そっちの方が嬉しいわ。サンキュな」
「どういたしまして」
透花が部屋を出て行くと、蒼一朗はブラウニーを鞄の中に仕舞う。
(さてと、明日のために、今日はもう寝るとすっかな)
そして、翌日のトレーニングにいつもよりも精を出すために、この日は早めにベッドの中に入ったのだった――――――――――。