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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十九話
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常連さんは、いつの間にか気になる存在に

①午前十時三十分、スーパーにて


 晴久は、明日以降の食材を買うためにスーパーを訪れていた。

 とても一人で運べる量ではないため、基本的には配達をお願いしているのだ。

 皆の口に入る食材はきちんと自分の目で確かめたいという思いがあるので、インターネットなどは使用せずにその度に店に足を運ぶようにしていた。


「こんにちは。これを、いつも通り宅配でお願いします」

「い、いいいいらっしゃいませ!」


 晴久は、たくさんの食材を選びサービスカウンターに向かう。

 するとそこには、いつもの中年の女性ではなく大人しそうな若い店員がいた。

 彼女は慌てふためきながらも、配達の手続きを済ませていく。


「う、承りました!」

「ありがとうございます。では、よろしくお願いします」

「あ、あの!」

「はい。どうかしましたか?」

「こ、こここここれ! 受け取ってください!!」


 買い物を終え帰ろうとした晴久に彼女が差し出したのは、黄色い小箱だった。

 ギンガムチェックのリボンが結ばれ、丁寧にラッピングされている。


「ええと、これは……?」

「ひ、日頃ご贔屓にしてくださっているお客様に、当店からのプレゼントです!」

「ああ、バレンタインのキャンペーンでしょうか。ありがとうございます」

「い、いえ! こちらこそありがとうございます!!」


 晴久はその箱を丁寧に受け取ると、笑顔で会釈をしてからその場を去った。

 彼の姿が見えなくなると、途端に彼女の頬は緩みニヤついてしまう。


(き、緊張した……! めっちゃどもっちゃったけど、そこまで変に思われてなかったっぽいよね!? ありがとうございます、だって! きゃー!!)


 このスーパー、バレンタインのキャンペーンなどそもそも行っていないのだ。

 毎回、店を訪れてはありえないほどたくさんの食材を買っていく。

 よほどの大家族なのか、それとも飲食店で働くシェフなのだろうか。

 そんなことを考える内に、いつの間にか気になる存在になっていたらしい。

 だが彼女には、晴久に話しかけ友好関係を築くほどの勇気はなかった。

 しかし、せっかくのバレンタインデーなので何か行動を起こしたい。

 色々と考えた末に、店員という立場を利用することを思い付いたのだ。

 彼女の企みは成功し、なんとかチョコレートを渡すことに成功したのである。


(こんなに立派な物をお客さんに配るなんて、最近のスーパーはすごいですね)


 だが、彼女の気持ちは露ほども晴久には伝わっていなかった。

 数時間後、この店がそのようなキャンペーンなど行っていないことを他の隊員から知らされた晴久は、一体どのような反応をするのだろうか――――――――――。

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