ふわふわ そわそわ ピンクの空気
男女ともにソワソワしてしまい、どこか浮ついた雰囲気に包まれる日。
二月十四日、本日はバレンタインデーである。
一色邸も例にもれず、ふわふわした空気が漂っている。
「今日は私が夕飯を作るからね! 手作りチョコもあるのでお楽しみに~♪」
一色隊の食事は、ほとんど全てが晴久によって作られている。
手伝いくらいならあるが、透花がメインで台所に立つことはほぼないのだ。
晴久ほどではないものの、彼女もまた料理上手なのである。
そんな彼女の手料理、そして手作りのお菓子が本日は振る舞われるらしい。
これに、一色隊の男たちが浮かれないわけがなかった。
素直に喜びを表現する者、顔には出さないがどこか嬉しそうな者など反応は様々だったが、彼らの間には幸福そうな空気が流れていた。
「いってらっしゃい。今日も一日、頑張ってね!」
皆を笑顔で見送ると、透花はさっそく準備に取り掛かる。
隊員たち全員に別々のお菓子を贈る予定のため、朝から大忙しなのだ。
このために、昨日までに全ての仕事を終わらせ、今日は休暇をとったほどだ。
「よーっし! やるぞー!!」
髪の毛を結び気合いを入れた透花は、スリッパをパタパタと鳴らしながらキッチンに入っていくのだった――――――――――。