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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十八話
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今、君に聞いてほしい話があるんだ。

 ひとしきり話をすると、志摩くんは一足先に会場に戻っていった。

 廊下で一人になった俺は、大きなため息をつきながら壁にもたれる。

 行儀が悪いのはわかってるけど、そのままズルズルと座り込んじゃったんだ。


(……あはは、柄にもなく緊張してたみたい。そりゃそうだよね~。あんなに大人数の前で演奏したの、すっごい久しぶりだし。ちょっと休憩してから戻ろっと)


 今になって緊張と疲労に襲われた俺は、ぼーっと天井を見つめる。

 ……そこには、何色かわからない天井があるだけだ。


「虹太くん、お疲れ様」


 ……俺は、ほとんど色なんてわかんないよ。

 でもね、音楽と一色隊のみんなの存在が、この世界を輝かせてくれるんだ。

 今、俺の目に映る透花さんはめちゃくちゃキラキラしてる。


「うん、ありがと~。勝手に休憩しちゃってごめんね」

「ううん、あれだけ気持ちのこもった演奏をしたんだもん。疲れていて当たり前だよ。私も少し休憩しようと思って、抜けてきちゃったんだ」

「そっか~。じゃあ一緒に休憩しよ~♪」


 ……なんとなくだけど、今なら俺の過去の話をできる気がした。

 志摩くんのこと、手の怪我のこと、それからこの目のこと……。

 目については知ってるって言ってたけど、俺から詳しい話をしたことはない。

 透花さんは、いつか俺の口から聞かせてほしいって言ってた。

 ……根拠なんてないけど、それは今だって強く思うよ。


「……透花さん、聞いてほしい話があるんだ。聞いてくれる……?」


 今は任務中だから、日を改めた方がいいのはわかってる。

 でも俺は、今話したい、今聞いてほしいんだ。


「うん、もちろん。どうしたの?」


 そんな俺に、透花さんは優しい笑顔を返してくれた。

 俺がどんな人生を送ってきたのか、まずは君に話すよ。

 その後に、ちゃんとみんなにも聞いてもらいたいって思うから。


「……ありがと~。あの、俺ね……」


 俺の話を全部聞いたら、透花さんはどんな顔をするかな?

 やっぱり、目のことをかわいそうって思う?

 それとも、怪我をきっかけに音楽から離れてたことを悲しんでくれる?

 ……ううん、どっちも違う気がする。

 きっと、話してくれてありがとうって言って優しい笑顔をくれるよね。

 そんな近い未来を想像しながら、俺は口を開いた――――――――――。

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