表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十八話
627/780

今の俺は、"一色隊の椎名虹太"なんです!

 あー、この人、よくコンクールの審査員をやってた先生だ。

 高校生の頃から顔はほとんど変わってないから、そりゃ覚えてるよね~。


「先生、お久しぶりです~」

「いやー、本当に久しぶりだね! 最近はどうしたんだい? コンクールにも出ていないし、かといってプロとして活躍しているわけでもなさそうだし」

「あはは、色々あったんですよ~」

「さっきの演奏を聴く限り、ピアノをやめたわけではないんだろう? 表舞台に戻ってきて、クラシック界に花を添えてくれないかい? 最近は、めっきり明るいニュースがなくてね。神童と呼ばれた君がいれば、この業界も安泰だよ!」

「いえいえ、今の俺は軍人なので!」

「ぐん、じん……? 椎名くん、それは何の冗談かな……?」

「冗談なんかじゃないですよ~。今の俺は、ただの大学生兼軍人です!」


 俺は、みんなに聞こえるように大きな声でそう言った。

 確かに神童って呼ばれてた時期もあったし、実際そうだったと思うよ。

 でも今はさ、”一色隊の椎名虹太”っていうのがしっくりくるんだよね。


「一色透花隊長が率いる一色隊に所属してるんです。あ、でも音楽活動は続けてますよ~。たまに公園でリサイタルをやったり、アイドルの曲を作ったり!」

「公園……!? それに、アイドル……!?」

「はい。昔とは違うけど、楽しみながら音楽と向かい合ってますよ~」

「……なんてもったいないことをしているんだ! 君ほどの腕があれば、超有名なホールを満員にすることだって簡単だというのに……!」

「もったいなくなんか、ないです」


 ……だって、俺はそんな風に思ったことなんて一度もないんだから。

 今の、みんなと一緒に暮らす生活が楽しくて仕方ないんだよね~。

 ……それに、これだけは絶対に胸を張って言えるんだ。


「今の俺には、自信を持って言えることがあります。昔の自分より、今の自分が好きです。今の自分の音楽も、とーっても愛してるんですよ!」


 俺が笑顔で言い切ると、審査員の先生がそれ以上口を開くことはなかった。


「それでは、失礼します。あっ、俺はたまに公園で演奏してるので、見かけたら気軽に声をかけてださいね~☆ 曲のリクエストなんかも受け付けますので!」


 俺はそう言うと、これ以上話しかけられないように急いで会場を出た。

 透花さんのところに戻るのは、ちょっと休憩してからでいいよね……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ