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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十八話
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思わぬ再会

「……椎名くん、久しぶり」


 透花さんがトイレに行くから、少しだけ離れてた時のことだった。

 さすがに、トイレの中までついてくわけにもいかないからね~。

 廊下で待ってると、誰かが俺に声をかけてきたんだ。

 それは、思いもよらない人物で……。


「志摩、くん……」


 なんで、俺が今日ここに来てるってわかったんだろう……?

 それに、どうしてこんな人気がない場所で話しかけてきたの……?

 ……俺の脳裏には、一瞬であの時の光景が蘇った。

 心臓が、うるさいくらいに鳴っているのがわかる。

 警戒を解かずに、無理矢理笑顔を作って彼に答えたよ。


「久しぶりだね~。今日は演奏で来たんだよね?」

「あ、うん……。その、椎名くんは……?」

「俺も仕事でだよ~。それにしても、よく俺がここにいるってわかったね」

「ダンスの時、すごく目立ってたから……」

「え~、そんなに目立ってた? ふつーに踊ってただけなんだけどな~」


 ……なんとか会話を続けてはいるけど、正直気は進まないよね。

 志摩くんが、どういう目的で俺に話しかけてきたのかわかんないし……。


「あの、僕、椎名くんに話したいことが……!」

「虹太くん、お待たせ。……あれ、お友達かな?」


 志摩くんが何かを言いかけたのと、透花さんが戻ってきたのは同時だった。


「あ、じゃあ、僕はこれで……」


 透花さんの顔を見ると、志摩くんは逃げるようにいなくなっちゃったんだ。

 そんな彼を見送る俺は、ポカンしてたと思うよ。


「ごめん、邪魔しちゃった?」

「……ううん、そんなことないよ~。ちょうど話も終わったとこだったし!」

「それならよかった。じゃあ、残りの時間も頑張ろう!」

「お~!」


 透花さんは、ごく自然な動作で俺と腕を組んだ。

 ……あんなにうるさかった心臓が、すっかり穏やかになってる。

 ……この手を離さなければ、大丈夫だ。

 この手さえあれば、俺はいつでも”俺”を見失わないでいれる。

 そんなことを考えながら、再び会場に足を踏み入れたんだ――――――――――。

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