おれのじまんのにいちゃん
閉会式も終わり帰る準備をしていると、隼輔が大和のもとを訪ねてきた。
「……しょうがいぶつきょうそうでは、おれはお前に負けた」
突然そう言い出した隼輔に、大和は思わず首を傾げてしまう。
「……でも、今日はにいちゃん同士のリレーで勝負する約束だったから、今回は引き分けだ! べ、別にお前に負けてくやしいなんて思ってないからな!? お前との勝負は、ちゃんと自分の手で決着をつけることに決めたんだ!!」
そう言うと隼輔は、後ろの方で帰る準備をしている美海をちらりと見た。
「お、お前は見なくていいんだよ! おれとお前はライバルだからな!?」
大和も隼輔が見ていた方向に視線を向けようとするが、阻止されてしまう。
「……お前のにいちゃん、すげーかっこいいな」
とても小さな言葉ではあったが、大和の耳には届いていた。
大和は満面の笑みになると、”ありがとう。しゅんすけくんのおにいちゃんも、すごくかっこいいね”と書いた紙を見せる。
それを見た隼輔は、元気な笑顔で自慢気に言うのだった。
「当たり前だろ! おれのじまんのにいちゃんなんだから!」
向かい合っている二人の表情は、キラキラと輝く笑顔だった。
幼い二人だけではなく、その場にいる全ての人間の心がほっこりと温まった瞬間である。