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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十八話
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お姫様に優しいキスを贈ろう

 それからも俺は、一生懸命透花さんのことをエスコートしたよ。

 任務を頑張ってる方が、いろいろ考えなくて済むしね~。

 たまに、志摩くんの音が聴こえてきてドキッとすることはあったけど……。

 さっきみたいな不意打ちじゃないから、なんとか我慢できたんだ。


「一色殿! ぜひ私にパートナーを務めさせてください!」

「いえいえ! ここは私が! 華麗な足捌きをお見せいたしますよ!」


「椎名様、私と一曲踊っていただけませんか?」

「あなたには婚約者がいらっしゃるでしょう! 私とご一緒しましょう!」


 そんなこんなで、パーティーも中盤に差し掛かってきた。

 これからダンスの時間なんだけど、俺たちはたくさんの人に囲まれてるよ。

 透花さんは美人だから、これだけ申し込みがあるのも納得だよね~☆

 俺が人気あるのは、年齢のおかげかな?

 今日のお客さんは、中年以上の人が多いみたいだし。

 それに、箱入りのお嬢様からしたら俺みたいなチャラ男は珍しいよね~。

 年末のパーティーでは、断らずにいろんな女の子と踊ったけど……。


「ごめんね。俺、今日のパートナーは決めてるんだ」


 女の子たちの誘いを断って、透花さんの手を取る。

 ……だって俺、あの時すっごく悔しかったんだもん。

 自業自得だけど、透花さんのエスコート役を柊平さんに取られちゃってさ。

 二人が並ぶと、美男美女って感じでほんとにお似合いだし!

 それに俺、まだ透花さんとこういう場所で踊ったことない。

 俺が自慢できるのって音楽とパーティーでの立ち居振る舞いだけなんだから、一番近くでカッコイイところ見せたいじゃん!

 俺の気持ちが伝わったのか、透花さんは他の誘いを丁寧に断ってくれた。


「透花さん、俺と一緒に踊ってください」


 俺は透花さんの柔らかい手の甲に軽くキスをしてから、そう言った。


「はい、喜んで」


 透花さんはこの日一番の笑顔を浮かべると、嬉しい返事をくれたんだよ。

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