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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十八話
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迷子になりたくないんだ

 志摩くんの音を聴いた俺は、動けなくなっちゃったんだ……。

 そんな俺を不思議に思った透花さんが、心配そうに声をかけてくれる。


「虹太くん、大丈夫? 何かあった?」

「……ううん、平気だよ」


 なんとかそう言ってはみたけど……。

 いつもみたいに笑顔じゃないし、声も震えてる。

 こんなの、嘘だってバレバレだよね……。


「挨拶も一段落ついたし、少し休憩しようか。何か飲み物を持ってくるよ」


 そう言うと、俺の腕と組んでいた透花さんの手が離れていく。

 それが、俺にはとっても怖いことに感じられて……。


「透花さん、待って……!」


 俺は、とっさにその手を掴んでた。

 今は、どうしても透花さんの手を離したくないんだ……。

 この温もりを失ったら俺は、迷子になっちゃいそう……。

 うまく言えないけど、そんな風に思えて仕方ないんだよ……。

 掴まれた手を、透花さんは一瞬だけ驚いたように見てた。

 だけどすぐに、いつもと違った様子の俺に何かを察してくれたみたい。

 離れていこうとしてた手が、また俺の腕を優しく掴む。

 そのことに心からホッとした俺は、へにゃりと笑ったんだ。


「先に行こうとしてごめんね。喉が渇いたから、何か飲まない?」

「うん。そうしよ~。俺も喉渇いた!」


 ウェイターからお酒を受け取ってる内に、志摩くんの演奏は終わってた。

 あの音が聴こえないことに安心して、カクテルを喉に流し込む。


(おいしー……)


 シャンパンに、オレンジの爽やかな酸味が混ざった味だ。


「透花さん、このカクテル、なんて名前だっけ~?」

「ミモザだよ。シャンパンにオレンジジュースを混ぜたものだね」

「ミモザ、かぁ……」


 ……きっとこのカクテルも、キレイなオレンジ色をしてるんだろうな。

 そんなことを考えながら、俺はそれをもう一度口に含む。

 そして、今日の任務に対して改めて気合いを入れ直したんだ。

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